2023.03.09 更新 2020.12.06 公開
住宅ローンで頭金なしを選ぶべき4つの理由とそのメリット

- 頭金の目安ってどれぐらい?
- 頭金がなくても住宅ローンは組めるの?
賢い住宅購入のためには頭金が必要不可欠だと思っていませんか? 実はそれ、高金利が続いたバブル時代の定説だったんです。低金利が続く現代において頭金を払うメリットはあまり多くありません。
むしろ、頭金ゼロで早めに住宅購入に踏み切る方が、手元に現金を多く残し想定外のリスクにも対応できるようになります。また、貯蓄のコントロールも可能です。
一方で、頭金を払った方がいい人もいます。それは、通常のローンを組めない人です。持病があるなどの理由で通常のローン審査に落ちてしまうと、制限が少ない代わりに金利が割高な住宅ローンを組まなければなりません。
その場合は生活を圧迫しない程度に頭金を支払い、返済額を少しでも減らして負担を小さくした方がよいでしょう。
本記事では、
- 頭金なし派が増えている4つの理由
- 頭金をゼロにしてでも確保すべき貯蓄額
- 頭金ゼロでも必ず必要な「諸費用」について
- 頭金なしでも後悔しないための2つのポイント
- 頭金を入れた方がいいケースと目安額
- 頭金や諸費用が手元にないときの対処法
など、住宅ローンの頭金を決める目安となる情報をまとめています。
本記事があなたの住宅購入計画にお役立ちできれば嬉しいです。
Advisor

Author

[著者]
ゼロリノベ編集部
元銀行員・宅地建物取引士・一級建築士が在籍して「住宅ローンサポート・不動産仲介・リノベーション設計・施工」をワンストップで手がけるゼロリノベ(株式会社groove agent)。著者の詳しいプロフィール
目次
住宅ローン頭金なしが令和のスタンダード
近年、住宅ローンは「頭金なし」を選択する人が増加傾向にあります。かつて「頭金は物件価格の2〜3割」と言われていましたが、それは金利が高かったバブル時代の定説でした。
当時は高金利で住宅ローン借入のハードルが高く、頭金をなるべく多く支払い返済額を減らさなければ住宅購入できなかったという背景があります。
バブル崩壊後は低金利が続き、ここ10年ほどは変動金利型で2.475%の状態が続いているため、頭金を多く入れるメリットが少なくなっています。
下のグラフは、昭和59年(1984年)から平成31年(2019年)までの35年間の金利の推移を表したものです。
出典:住宅金融支援機構「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」より転載
特に目立つのは、昭和62年から平成3年にかけての金利上昇とそれ以降の急落な下落です。ちょうどバブル期に変動金利が大きく上昇し、バブル崩壊とともに低金利の時代へ突入したとグラフから見てうかがえます。
このように低金利が続くと、頭金を入れても総支払額にあまり差が出なくなってしまいます。以下の図で、頭金の比率によって返済額にどれだけ差が出るかをまとめてみました。
青字部分をご覧ください。頭金ゼロと頭金2割を比較してみても総支払額の差は約103万円です。もし手元に800万円を残せれば、それを元手に投資など資産運用に活用することができます。
総支払額を103万円減らすことよりも、頭金800万円を手元に残した方が得られるメリットが多いのです。そのため最近では手元に現金を残せる「頭金なし」を選ぶ人が増えています。
「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」のアンケート調査によると、ローンを組んで住まいを購入した世帯のうち「頭金はゼロ」と答えた人が27.0%、「頭金は1割」が21.7%で、「頭金無し もしくは 1割程度で購入する世帯」が約半数に上ることがわかりました。
出所:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2021年)9頁。
上記の表を見ると全体でも約半数、20代、30代では6割以上の人が「ゼロ(頭金なし)」もしくは「頭金1割」を選んでいます。
住宅ローンの頭金をなしにすると、次のようなメリットが得られます。
- 家賃流出を抑えられる
- 住宅ローン控除を最大限活用できる
- 手元に現金を残せる
- 繰り上げ返済でいつでも返済額を減らせる
これらのメリットを活かして賢く住宅購入したい、低金利では頭金のうまみが少ない、といった背景から「頭金なし派」が増加しているのだと考えられます。
頭金なしのメリットについては、「2.住宅ローンの頭金をゼロにすべき他の4つの理由」で詳しく解説します。
ここまで、
・低金利が続き頭金を多く支払うメリットが少なくなっている
・現代では「頭金ゼロ/頭金1割派」が半数を超えている
以上のポイントを解説してきました。
次章では、なぜ手元に現金を残すべきなのか詳しく解説していきます。
1-1.頭金を払うより手元にお金を残すべき2つの理由
頭金をゼロにして手元にお金を残すべき理由は
- 教育費
- 老後資金
2つの費用が想像以上に必要だからです。
人生における大きな出費は住宅購入だけではありません。生活費に加えて教育費、老後資金など将来への蓄えも必要ですし、旅行や趣味を楽しむための余力も残しておきたいところです。
住宅ローンの返済に多く資金を使ってしまうと、後々必要な使い途に充てる費用がなくなってしまいます。
そのため、頭金をゼロにして手元に残ったお金を貯蓄や運用などに有効活用することが非常に重要です。
教育費、老後資金それぞれいくら必要なのか実態を把握しておきましょう。
1-1-1.教育費はオール公立で1人1,000万円、オール私立で2,000万円必要
子どもがいる家庭の場合、1人あたり1,000〜2,000万円の教育費が必要になります。教育費のピークは大学入学時あたりにやってくるため、この時に備えて資金準備しておかなければなりません。
たとえば、
夫42歳、妻41歳、第一子13歳(中1)、第二子9歳(小3)でシミュレーションすると、教育費のピークは47歳から52歳、その間は年間200万円〜300万円かかる想定となります。
※高校まで公立、大学は私立理系の場合で試算
(参考)
▼幼稚園〜高校までの学習費総額
▼居住形態別大学学生生活費(年間)
日々の生活費や習い事など直近の教育費に加え、さらにこの先必要な貯蓄を捻出しなければならないとなると、支出を抑えても足りなくなってしまうかもしれません。
そのためにも、頭金はゼロにして貯蓄や運用に回すことをおすすめします。
1-1-2.老後資金は最低限の生活でも手元に2,000万円必要
老後資金は、年金以外に夫婦2人で最低でも2,000万円が必要になります。老後資金の目安額は次の通りです。
最低限の生活費:2,000万円
余裕のある生活:4,000万円〜6,000万円
子どもや孫にも資産を残せる:8,000万円〜1億円
下のグラフは、一般的な夫婦の老後生活費を表したものです。上の段で収入と不足分を、下の段で支出がわかります。
出典:「家計調査(家計収支編2021年)」より
必要最低限の生活費を賄うのに、年金等の給付額を差し引くと毎月1万8,525円、30年間で約556万円の不足が発生してしまいます。
この不足分を補うために自己資金として最低限2,000万円の老後資金が必要だと言われているのです。
一方で、生活保険文化センターの生活保障に関する調査(令和元年度)(42P)によると、ゆとりある生活のために必要な金額は平均で月36万1,000円という結果が出ています。
その場合、月々約15万円が不足分となるため、30年で約5,600万円が貯蓄として必要ということになるのです。
貯蓄を住宅購入費に充てる際にこれらの資金形成を考慮しないことは非常にリスクが高いです。最悪の場合、住宅ローンの支払いが滞り任意売却という未来もありえます。
将来に不安を残さず住宅購入するためにも、頭金なしで手元の資金を貯蓄や運用に回し資産形成しておくことが非常に重要なのです。
1-2.通常の住宅ローン審査に通らない人は頭金ありがおすすめ
ほとんどの場合、頭金ゼロで住宅ローンを借りた方がメリットが多くなります。しかし、通常の住宅ローン審査に不利な人は、頭金を入れると住宅ローンの返済額を抑えられます。
持病がある方など通常のローン審査に通らなかった場合、フラット35であれば住宅ローンを借りることができます。ただしフラット35は審査の制限が少ない分、金利が通常のローンより高い傾向にあります。
そのため、頭金を支払い返済額を減らした方が住宅購入費が安く済む可能性があります。詳しくは「5.住宅ローンは頭金を入れた方がいいケースもある」で解説します。
住宅ローンの頭金をゼロにすべき他の4つの理由
頭金の資金が手元にある人こそ、頭金をゼロにしてその分を投資や貯金にまわした方が長い目で見てプラスに働きます。
また、頭金が手元に無いという人も早めに頭金ゼロで家を買った方が住宅費を固定でき、貯蓄の管理がしやすくなります。
頭金をゼロにすべき理由は、以下の4つです。
【理由1】家賃流出を抑えられる
【理由2】住宅ローン控除を最大限活用できる
【理由3】手元に現金を残せる
【理由4】繰り上げ返済でいつでも返済額を減らせる
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1.【理由1】家賃流出を抑えられる
頭金を貯めてから住宅購入するケースと頭金ゼロですぐに住宅購入するケースでは、家賃流出額に大きな差が出ます。
たとえば家賃10万円の賃貸住宅に住み続けると1年間で100万円頭金を貯められたとしても家賃流出の方が20万円上回ってしまうのです。
賃貸住宅の家賃は、いわば掛け捨てのようなもの。一方、持ち家なら将来売却や贈与できる資産とすることもできるはずです。
頭金ゼロで早めに住宅購入することで家賃流出が抑えられ、同時に資産形成を行うことができるメリットがあるのです。
2-2.【理由2】住宅ローン控除を最大限活用できる
頭金ゼロで住宅ローンを組むことで、その分ローンの借入額が多くなり、住宅ローン減税(控除)を最大限活用できる可能性があります。
※内容や控除対象となる条件は都度変更となるため、詳細は住宅ローン減税|国土交通省のHPでご確認ください。
住宅ローンシミュレーションと住宅ローン控除(減税)シミュレーションを用いて試算してみましょう。
<シミュレーション条件>
・夫婦共働き
・住宅ローン契約者の年収が700万円
・子ども1人の3人家族
同じ500万円を頭金で支払う場合と、10年後に繰り上げ返済で支払う場合とでは、頭金なしで組める後者の計画の方が結果お得になるのです。
このように、頭金なしで住宅ローン控除を活用し、繰り上げ返済を組み合わせることで賢いローン返済が実現できます。
頭金ゼロで住宅ローン控除を受ける際のポイントとして、以下の2つを守りましょう。
<POINT>
1.住宅ローンの借入期間は10年以上にする
2.住宅ローン控除期間中は繰り上げ返済によって住宅ローン借入額を減らさない
以上のポイントを守ることで、住宅ローン控除を最大限活用できるようになります。住宅ローン控除は「その年の住宅ローン残高の1%」が所得税等から控除される仕組みであるため、繰り上げ返済で借入額を減らしてしまうと控除額も少なくなってしまいます。
ただし、例外として金利が1%、つまりローン控除額を上回る場合は繰り上げ返済で利息を減らした方が総支払い額が安く済む可能性があります。
金利が1%以下:住宅ローン控除(減税)のフル活用
金利が1%以上:繰り上げ返済の活用
以上のように、住宅ローンの金利が1%以下であるかどうかを、控除の活用か繰り上げ返済するかの判断目安にしましょう。
住宅ローンシミュレーションや住宅ローン控除(減税)シミュレーションを活用して返済額を事前に確認するほか、ファイナンシャルプランナーや銀行窓口で相談するとよいでしょう。
2-3.【理由3】手元に現金を残せる
頭金をゼロにすれば、当然ですがその分の現金を手元に残すことができます。この手元の資金を、貯蓄や運用に回すことが今後非常に大切になってきます。
「1-1.頭金を払うより手元にお金を残すべき2つの理由」で解説したとおり住宅購入費の他に生活費、教育費、老後資金などを貯蓄しなければなりません。
また、病気や怪我などの万が一のリスクに備え、住宅購入後およそ半年〜1年間分の生活予備費を手元に残しておくと安心です。
頭金をゼロにすれば、数百万円のお金を手元でコントロールすることができ、貯蓄や資産運用など、より有効的な方法で活用できるようになります。
2-4.【理由4】繰り上げ返済でいつでも返済額を減らせる
住宅ローン返済額を減らすためには、頭金を多く支払うよりも繰り上げ返済を適宜行う方が安心です。
その際、「2-2.【理由2】住宅ローン控除を最大限活用できる」で解説したように住宅ローン控除を最大期間受けた後に繰り上げ返済するようにしましょう。
また、繰り上げ返済を行うためには手元の資金に余裕があることが前提となります。そもそも老後資金に不安がある、これから教育費がたくさんかかる、といった場合には繰り上げ返済にお金を使わず、貯蓄や資産運用に活用するようにしましょう。
2-4-1.繰り上げ返済の手数料がかからない金融機関を選ぶべし
繰り上げ返済を行う場合、手数料がかからない金融機関を選びましょう。繰り上げ返済には「一部繰り上げ返済」と「全額繰り上げ返済」があります。一部繰り上げ返済は手数料無料の金融機関がほとんどです。
ただし、一部繰り上げ返済でも
・窓口での手続きは手数料が必要
・オンラインでの手続きは無料
という金融機関もあります。
住宅ローンを比較検討するなら、繰り上げ返済の手数料も念の為確認しておくとよいでしょう。繰り上げ返済について詳しくは以下の記事をご覧ください。
参考:住宅ローンの繰り上げ返済について解説している記事はこちら
住宅ローンの頭金はゼロでも物件の3〜5%程度の諸費用は必要
頭金がゼロでも、住宅購入には必ず諸費用がかかります。諸費用とは、住宅購入の手続きに必要な手数料や保証料、税金などを総称したものです。
住宅ローンの諸費用には一般的に住宅価格の3〜5%程度の費用が必要と言われており、中古物件の場合はプラスで仲介手数料がかかります。
「仲介手数料がかからない分、新築マンションはお得ということ?」と思われるかもしれませんが、実際は売主である不動産会社の販売利益が広告費などが上乗せされているため、比較すると差はあまり出ないでしょう。
諸費用について詳しくは以下の記事をご覧ください。
3-1.諸費用ローンを借りるなら取扱機関と金利に注意しよう
諸費用が手元に無い方は、住宅ローンと一緒に諸費用も借りる「オーバーローン」という方法か、住宅ローンとは別に諸費用ローンを組む方法があります。どちらの方法も、通常より金利が高くなる可能性があるため注意しましょう。
▼オーバーローンを検討される場合
フラット35のように融資率(借入額÷住宅の購入費用)が9割を超えると金利が高くなる金融商品があります。必ず事前に確認をしましょう。
▼諸費用ローンの借入を検討される場合
基本的には住宅ローンを借りた金融機関から借りることになるのですが、取扱機関が限られているため事前の確認が必要です。また、金利が2〜3%と通常の住宅ローンと比較して高い傾向にあるため予算内に収まるかどうか注意しましょう。
たとえば、三菱UFJ銀行の金利を見てみると通常の住宅ローンが年利2.475%であるのに対し、住宅諸費用ローンは年利4.475%です。
<三菱UFJ銀行の金利事例>
住宅ローン(変動タイプ・毎月型) | 住宅諸費用ローン(変動タイプ) |
年2.475% | 年4.475% |
(上記は2023年3月9日現在のローン金利を元に作成したものです。最新のデータは公式HPをご確認ください。)
取扱機関が限られていること、金利が高いことを念頭において資金計画を立て、その上でファイナンシャルプランナーや銀行窓口に相談することをおすすめします。
また、諸費用ローンの他にも親や祖父母からの贈与を住宅資金として貰うことで最大1,610万円の非課税措置を受けられる可能性があります。詳しくは「5-3.住宅に係る贈与金で頭金をカバーするという手もある」をご覧ください。
頭金なしで後悔しないためのポイントは「借入額」と「早期売却の値下がりリスク」
頭金なしで住宅購入する際、後悔しないために気をつけることは以下の2点です。
- 安心予算内で借り入れる
- 早期売却するなら値下がりリスクを見込む
それぞれ詳しく説明していきます。
4-1.安心予算内で借り入れしよう
頭金をなしにすると、頭金ありの場合に比べて月々のローン返済額は高くなります。そのため「手取り年収の20%程度」を安心して借りられる目安とし、予算内で資金計画することをおすすめしています。
安心予算をもとに借入額を決めれば、頭金なしでも月々の返済額が生活を圧迫することなく貯蓄をしたり、もしものリスクに備えることができます。
安心予算について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連:年収ごとの住宅ローン借入額目安について解説している記事はこちら
4-2.早期売却するなら値下がりリスクを見込むこと
特に新築や築浅物件を検討されている方で、住み替えのために売却を予定されている方は借入額を見直してみましょう。
なぜなら、値下がりが大きい傾向にある築浅の物件においては、早期売却する際に売却金額でローンの残債をカバーすることができず、ダブルローンになる可能性があるためです。
値下がりリスクに備える方法として、
- 値下がりしにくい築20年以降の物件を選ぶ
- 値下がりリスクを見込んだ予算でローンを借り入れする
以上のような対策が考えられます。
一つ目の「値下がりしにくい築20年以降の物件を選ぶ」について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連:中古マンションの築年数について解説している記事はこちら
「2.値下がりリスクを見込んだ予算でローンを借り入れする」に関してはご自身で判断するのが難しいケースもあるため、お金のプロであるファイナンシャルプランナーに相談してから住宅購入に進むと安心です。
住宅ローンの頭金を入れた方がいい人は少数派
ほとんどの場合、住宅ローンは頭金なしで借りて手元に資金を残した方が余裕のある生活を送ることができますが、以下のケースでは頭金を支払うことをおすすめします。
- 通常の住宅ローンを借りられない人
- 50歳以上の人
それぞれのケースについて解説していきます。
5-1.通常のローンを借りられない人は頭金ありを選択
持病があるなどの理由で団体信用生命保険に加入できない人のように、通常のローンを組めない場合は団信に加入しなくても借入可能なフラット35の利用を検討しましょう。
ただしフラット35は融資率が9割を超えると金利が高くなるほか、通常の金利も他と比べて高い傾向にあるため、なるべく1割以上の頭金を入れて総支払い額を減らしたほうが経済的です。
以下は、同じ3,000万円の物件を頭金なし/頭金500万円のケースに分けて住宅ローン返済額をシミュレーションしたものです。
▼3,000万円のマンションを購入する場合
ケースA:頭金なし・全期間固定金利1.910%
ケースB:頭金500万円あり・全期間固定金利1.650%
※元利均等返済、返済期間35年の場合
住宅ローンシミュレーションで試算した結果を元に筆者作成
頭金なしで3,000万円借り入れる場合は総返済額が約4,116万円になるのに対し、頭金300万円・借入額2,700万円の場合は総返済額が3,856万円という結果です。頭金を1割入れるか入れないかで、260万円の差額が発生しました。
頭金なしで早く・長く住宅ローンを組めるのが望ましいですが、高金利の住宅ローンを選ぶ場合は貯蓄を削らない範囲でどれくらい頭金を入れられるか考えてみましょう。
5-2.50歳以上の人はそもそも頭金を入れないと審査に通らない可能性あり
50歳以上の人は定年が近く、住宅ローンを組める期間が短くなるので頭金を入れないと住宅ローン審査に通らない可能性があります。そのため、老後資金に響かない範囲で頭金を支払うようにしましょう。
住宅ローン審査に通るために必要な頭金の目安額としては、物件価格の1/3以上と考えるのが無難です。
詳しくは、年齢別に住宅ローンの組み方を解説しているこちらの記事をご覧ください。
5-3.住宅に係る贈与金で頭金をカバーするという手もある
頭金や諸費用が手元になく、かつ通常の住宅ローンを借りられない場合は両親または祖父母からの贈与を頭金に充てるという方法があります。
下の図は住宅資金として贈与を受け取った場合に限り受けられる非課税措置をまとめた表です。
通常、110万円を超える贈与には贈与税がかかります。しかし、住宅購入に係る贈与については、最大1,610万円まで非課税で受け取ることができます。
「手元に資金がないけれど、すぐに住宅購入に動きたい」という人は非課税措置を活用し贈与を受けるという方法も検討・相談してみるとよいでしょう。
条件や金額などは変更になる可能性もあるため、詳しくは、国税庁による以下のページをご参照ください。
参考:国税庁HP「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
5-4.頭金は生活費を圧迫しない額で支払う
支払える頭金の目安額は、以下のように考えましょう。
=定年時の貯蓄定年時の貯蓄(①現在の貯蓄+②定年までに増やせる貯蓄+③退職金)ー 老後資金
住宅費に充てられる資金には、繰り上げ返済額なども含まれます。以上の計算をしてみて、そのうち現在の貯蓄から住宅費に使える分を頭金として支払いましょう。
もし、上記の試算をしてみて思ったよりも頭金が出せないと思ったら、購入する物件の価格を見直す必要があるかもしれません。
頭金を入れる際の注意点
頭金を支払う際は、以下の点に注意しましょう。
- 諸費用にかかるお金は必ず手元に残す
- もしものリスクに備え、生活予備費を手元に残す
返済額を減らしたり、住宅ローン審査に通るために有効な頭金ですが、貯蓄を削り無理をして捻出をしてはいけません。
物件価格の3〜5%と言われる諸費用と、住宅購入後およそ半年〜1年間分の生活予備費を手元に残し、病気や怪我などの万が一のリスクに備える必要があります。
これらの資金を削らないと頭金が払えない……という場合は、「5-3.住宅に係る贈与金で頭金をカバーするという手もある」でご紹介した贈与を検討してみたり、物件の購入価格を見直してみたりしましょう。
また、制限のある中で住宅購入資金を計画するためにはプロの意見も欠かせません。できればファイナンシャルプランナーや銀行窓口で相談されることをおすすめします。
住宅ローンの頭金について各銀行の対応
頭金がないと借りられない住宅ローンはありません。ほとんどの場合は頭金なしで借り入れて問題ないのですが、一部金融商品では「頭金を1割以上入れた方が金利優遇がある」といったものもあります。
頭金あり/なしどちらを選択した方がよいかについて、各銀行の対応を一覧表にまとめました。住宅ローン選びの際にご活用ください。
まとめ
低金利が続く現代では、住宅ローンは頭金なしで少しでも早く組み始めた方がメリットを多く得られます。
今後必要になる教育費や老後資金のために手元に多く現金を残し、貯蓄や運用などより賢く活用していきましょう。
住宅ローンの頭金目安額ってどれくらい?
ほとんどのケースは頭金なしで早めに住宅購入した方がメリットがあります。一方、50代以上で頭金を入れなければローン審査に通らない人は物件価格の1/3以上を目安に考えましょう、詳しくは「1.令和は頭金ゼロがスタンダード」、「5.頭金を入れた方がいいケースもある」をご覧ください。
住宅ローンで頭金なしのメリットは何?
頭金なしで住宅ローンを組むことで次の4つのメリットが得られます。 ・家賃流出を抑えられる ・住宅ローン控除を最大限活用できる ・手元に現金を残せる ・繰り上げ返済でいつでも返済額を減らせる 詳しくは「2.頭金をゼロにすべき4つの理由」をご覧ください。
頭金を入れるなら貯金はいくら残すべき?
頭金を含む住宅購入費は「定年時の貯蓄(①現在の貯蓄②定年まで増やせる貯蓄③退職金)ー 老後資金」で計算します。老後資金は最低でも2,000万円必要で、さらに半年〜1年間分の生活予備費があると安心です。詳しくは「1.令和は頭金ゼロがスタンダード」をご覧ください。