2022.06.02 更新

住宅ローンは一括返済が得とは限らない!メリット・デメリットを解説

住宅ローン 一括払い アイキャッチ

住宅ローンの一括返済を検討している方にまずお伝えしたいのは「一括返済が必ずしもベストな選択肢とは限らない」という事実です。

例えば、住宅ローンの一括返済には、以下のデメリットがあります。

  1. 手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る
  2. 返済手数料がかかる
  3. 住宅ローン控除が適用されなくなる
  4. 団体信用生命保険がなくなる
  5. 超低金利・インフレ下では効果が低い

大切なのは「借金=早く返したほうが良い」と思い込まずに、メリット・デメリットの両方を正しく理解し、自分にとって最適な判断ができるようにすることです。

そこで本記事では、住宅ローンの一括返済を少しでも検討しているなら必ず知っておきたい「一括返済のメリット・デメリット」について解説します。

<本記事のポイント>

  • 住宅ローン一括返済のメリット・デメリットが理解できる
  • 住宅ローンの一括返済がおすすめな人・おすすめではない人がわかる
  •  一括返済する場合の注意点まで解説

「住宅ローンの一括返済について知りたい」
「損しない正しい判断をしたい」
…という方におすすめの内容となっています。

この解説を最後までお読みいただければ、「住宅ローンの一括返済で得するポイント・損するポイント」が理解できるようになります。単純に一括返済が良いとはいえないことがわかるでしょう。

そのうえで一括返済をすべきか・しないべきか検討すれば、自分の状況にとってベストな選択ができるようになります。ではさっそく解説を始めましょう。

Advisor

【監修】ファイナンシャルプランナー茂木禄人

[監修] ファイナンシャルプランナー

茂木 禄人

株式会社Mapフィナンシャル において、独立系アドバイザーとして活動。詳細プロフィールはこちら

Author

“【著者】ゼロリノベ編集部"

[著者]

ゼロリノベ編集部

元銀行員・宅地建物取引士・一級建築士が在籍して「住宅ローンサポート・不動産仲介・リノベーション設計・施工」をワンストップで手がけるゼロリノベ(株式会社groove agent)。著者の詳しいプロフィール

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住宅ローンの一括返済とは

まず住宅ローン一括返済とは何なのか、簡単に理解しておきましょう。

住宅ローンの三大疾病特約とは住宅ローンの一括返済とは、借り入れている住宅ローンの残高の全額をすべて返済し、借入金を完済することです。全額繰り上げ返済と呼ばれることもあります。

一括返済では、当初予定していたよりも早期に完済するため、支払予定だった利息をカットし、支払総額を減少させる効果があります。

例えば、「借入金額3,000万円・借入期間35年・固定金利1.2%・元利均等の住宅ローンを、借入れから15年後に一括返済した場合」のシミュレーションを見てみましょう。

▼ シミュレーション結果

一括返済しなかった場合 一括返済した場合
総返済額 36,754,200円 34,415,921円 ▲2,338,279円
利息 6,754,200円 4,415,921円 ▲2,338,279円
返済期間 35年 15年 ▲20年
一括返済額 18,664,121円

一括返済しなかった場合に比較して【233万円】の利息分が軽減されていることがわかります。

なお、住宅ローンの残高を全額返済するのではなく、一部を繰り上げ返済するケースについては、以下の記事で解説しています。

参考:住宅ローンの繰り上げ返済に関する記事はこちら

一部繰り上げを検討している方は、上記の記事からご覧ください。

住宅ローン一括返済のメリット

住宅ローンの一括返済には、メリットもあればデメリットもあります。まずはメリットから解説しましょう。

1.利息をカットして総返済額を減らせる
2.新たなローンの借入可能額を増やせる
3.保証金が返金されるケースがある

2-1. 利息をカットして総返済額を減らせる

1つめのメリットは「利息をカットして総返済額を減らせる」ことです。

住宅ローンは、返済期間が長いほど支払う利息の金額が増えて、総返済額が多くなります。

逆に返済期間が短いほど、支払う利息の金額は減って、総返済額が少なくなります。

一括返済によって、当初予定していた返済期間よりも早く完済すれば、将来的に支払う予定だった分の利息が不要になり、総支払額を減らすことができるのです。

この点は、住宅ローンを一括返済する最大のメリットといえるでしょう。

2-2. 新たなローンの借入可能額を増やせる

2つめのメリットは「新たなローンの借入可能額を増やせる」ことです。

住み替えやセカンドハウスなど新たな住宅を購入するための住宅ローンや、リフォームローン、教育ローンなど、新たなローンを借り入れたいときには、先に借り入れている住宅ローンを一括返済しておくと、借入可能額を増やせます。

というのは、金融機関の審査で重要になる「返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)」に、一括返済によって余裕ができるからです。

例えば【フラット35】の利用条件となる返済負担率の基準は以下のとおりです。

▼ 【フラット35】の返済負担率の基準

年収 400万円未満 400万円以上
基準 30%以下 35%以下

出典:【フラット35】ご利用条件:長期固定金利住宅ローン

もし年収500万円の人が年間100万円の住宅ローン返済をしている場合、返済負担率は既存の住宅ローンだけで【20%】まで占めてしまいます。

そこで一括返済をすれば【20%→0%】となり、新たなローンを借り入れる余裕が生まれるというわけです。

2-3. 保証料が返金されるケースがある

3つめのメリットは「保証料が返金されるケースがある」ことです。

“住宅ローン保証料あり”の住宅ローンを借り入れていて、保証料を一括前払い型(外枠方式)で住宅ローンの契約時に一括払いしていた場合には、前払いしていた分の保証料が返金されます。

保証料の目安は物件価格の2%程度となっています。例えば3,000万円の物件を購入した場合には【60万円】程度の保証料を支払っており、一括返済によってその一部が返金されることになります。

どの程度の金額が戻ってくるかは、保証会社の規約や一括返済のタイミングによって変わります。

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住宅ローン一括返済のデメリット

次に住宅ローン一括返済のデメリットを見ていきましょう。

1.手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る
2.返済手数料がかかる
3.住宅ローン控除が適用されなくなる
4.団体信用生命保険がなくなる
5.超低金利・インフレ下では効果が低い

3-1. 手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る

1つめのデメリットは「手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る」ことです。

一括返済に手元の資金を使ってしまうと、当然のことながらその分、手元の資金が減ってしまいます。

一括返済となると金額が大きくなることも多く、手元資金に余裕がなければ、万が一のときの備えが手薄になりかねません。

例えば、病気やけが、災害、突然の失業、収入減、想定外の教育費など、予想していない事態に遭遇する可能性は、誰にでもあります。

そんなとき、あてにできるお金の金額が目減りすることは、住宅ローン一括返済の大きなデメリットです。

3-2. 返済手数料がかかる

2つめのデメリットは「返済手数料がかかる」ことです。

金融機関によっては住宅ローンの一括返済時に、返済手数料がかかります。例えば、三菱UFJ銀行で借り入れた住宅ローンを一括返済したときにかかる手数料は以下のとおりです。

お申込方法 期限前完済手数料(消費税込)
インターネット 16,500円
テレビ窓口 22,000円
窓口 33,000円
保証会社事務手数料 11,000円

出典: 三菱UFJ銀行

例えば、住宅ローン保証料ありの住宅ローンの一括返済を窓口で申し込んだ場合には、
【33,000円+11,000円=44,000円
の返済手数料がかかることになります。

実際の金額は金融機関によって異なりますので、それぞれ確認が必要です。

3-3. 住宅ローン控除が適用されなくなる

3つめのデメリットは「住宅ローン控除が適用されなくなる」ことです。

住宅ローンを借り入れている人の多くは住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)を利用しています。

年末時点の住宅ローンの残高に応じて所得税が減税される制度ですが、控除額や控除が受けられる年数は住宅ローンを借り入れた時点によって変わります。

例えば「令和3年1月1日から令和3年12月31日まで」に借り入れた住宅ローンの場合、以下のとおりです。

▼住宅ローン控除

・控除期間:10年
・控除額:年末残高 × 1%(控除限度額40万円)

つまり満額で控除を受けた場合【10年間で400万円】の減税となります。

住宅ローンを一括返済すると、この住宅ローン控除は適用されなくなります。一括返済によって期待できる利息のカット額と比較してどちらが得になるのか、慎重に試算する必要があります。

参考:No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

3-4. 団体信用生命保険がなくなる

3つめのデメリットは「団体信用生命保険がなくなる」ことです。

団体信用生命保険とは、住宅ローンを借り入れる人を対象とした生命保険で「団信、団信保険」などとも呼ばれます。

住宅ローンの返済中に万が一のことがあった場合、保険金によって住宅ローンの残額を返済できる保険契約で、住宅ローンの多くは団体信用生命保険への加入が条件となっています。

例えば、住宅ローンの利用者(債務者)が死亡または高度障害となったときは、保険金の弁済対象となるのが一般的です。

ほかに、保険契約の内容によっては「がんと診断確定時」など、死亡・高度障害以外を対象としているケースもあります。

住宅ローンを一括返済すると、団体信用生命保険の契約も終了となります。

イメージしやすくするために、
「ローンの残額1,000万円を一括返済した直後に、がんと診断確定になった場合」
を考えてみましょう。

がんの診断確定が対象となっている団体信用生命保険に加入していたのなら、
「1,000万円を一括返済しなければ、保険金で1,000万円をまかなうことができたのに」
と後悔するかもしれません。

保険金でまかなえたはずの金額がまかなえず、さらに手元にあれば治療費や休養中の生活費として使えたはずの資金が一括返済によりなくなるため、結果論としては一括返済すべきではなかったケースといえます。

3-5. 超低金利・インフレ下では効果が低い

5つめのデメリットは「超低金利・インフレ下では効果が低い」ことです。

ここまで4つのデメリットを解説してきましたが、「デメリットを上回る効果を一括返済がもたらすか?」といえば、現在の超低金利時代においては効果が低いといわざるを得ません。

金利が低い分、一括返済によってカットできる利息額も低くなっているためです。

加えてインフレ(物価が上がりお金の価値が下がる)が続く状況であれば、元本の返済はできるだけ後にしたほうがお得ということになります。

日本経済は緩やかなデフレが続いていますが、今後、急激なインフレが起きた場合には、
「一括返済せずに、ゆっくり返していたほうがお得だった」
となる可能性もあり得ます。

住宅ローンの一括返済がおすすめな人・おすすめではない人

さて、ここまでに見てきたメリット・デメリットを踏まえつつ、住宅ローンの繰り上げ返済がおすすめな人・おすすめでない人をまとめてみましょう。

4-1. ◎ おすすめな人

まず住宅ローンの一括返済がおすすめできる人はこちらです。

  • 住宅ローンを一括返済しても、十分な手元資金(現金、預貯金)がある
  • 「新たなローンを借り入れたい」など一括返済する明確な必要性がある
  • 住宅ローン控除の控除期間が終わっている

とにかく第一に注意しなければならないのは「資金的な余裕があるかどうか」です。

十分な余裕がないのに一括返済してしまい、後からお金が必要になっても、もう一括返済した金額は戻ってきません。

例えば、相続や贈与など想定外のまとまったお金が入ったなど、潤沢な資金がある場合であれば、一括返済はおすすめできます。

また、新たな住宅ローンの借入れなど、明確な一括返済の必要性がある場合も、一括返済を検討して良いといえるでしょう。

一括返済のタイミングとしては、住宅ローンの控除期間(借入期間によって異なるが主に10年)が過ぎてからのほうがおすすめです。

4-2. ✕ おすすめではない人

次に住宅ローンの一括返済がおすすめでない人を見てみましょう。

  • 住宅ローンを一括返済すると、十分な手元資金(現金、預貯金)を確保できない
  • 団体信用生命保険がなくなることに不安を感じる
  • 住宅ローン控除の控除期間が終わっていない

住宅ローンを一括返済すると、手元資金がなくなるうえに、一括返済しなければ契約が続いたはずの団体信用生命保険がなくなることについて、慎重に捉える必要があります。

十分な資金がないのに一括返済に踏み切ることは、大きなリスクとなる可能性があります。

リスクを取ることに不安がある場合には、一括返済せずに住宅ローンをコツコツと返済し続けることをおすすめします。

加えて、住宅ローン控除の控除期間が終わっていない場合にも、住宅ローンの一括返済は待ったほうが良いでしょう。

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住宅ローン一括返済の手続きの流れ 3ステップ

住宅ローンの一括返済をする場合、どんな手続きをしたら良いのでしょうか。

金融機関によって手続きの詳細が異なる場合もありますが、ここでは一般的な流れをご紹介します。

  • 【STEP1】:借入れ金融機関に連絡する
  • 【STEP2】:必要書類を金融機関に提出する
  • 【STEP3】:残額を金融機関に支払う

5-1. STEP1:借入れ金融機関に連絡する

1つめのステップは「借入れ金融機関に連絡する」です。

一括返済の手続きはインターネット上ではできないケースがほとんどです。金融機関の窓口に出向くか、電話+郵送での書面のやり取りが必要になります。

住宅ローンを借り入れている金融機関の窓口または所定の電話番号に連絡して、一括返済を希望する旨を伝えましょう。

時期としては、一括返済を希望する日の1カ月前まで(期限は金融機関によって異なる)に連絡します。

5-2. STEP2:必要書類を金融機関に提出する

2つめのステップは「必要書類を金融機関に提出する」です。

一括返済を申し出ると、金融機関から必要書類の提示があります。具体的には「全額繰上返済依頼書」などの一括返済の申込書に記入し、返送する必要があります。

指定された期日までに金融機関に到着するよう、余裕を持って提出しましょう。

5-3. STEP3:残額を金融機関に支払う

3つめのステップは「残額を金融機関に支払う」です。

指定された口座へ入金するか、または金融機関の窓口へ現金を持参して、残額の支払いをします。

この際に、返済にかかる手数料もあわせて支払い、一括返済の完了となります。

住宅ローン一括返済をする際の注意点

住宅ローンの一括返済をするうえでは注意点がありますので、確認しておきましょう。

6-1. 抵当権抹消登記を忘れずに行う

1つめの注意点は「抵当権抹消登記を忘れずに行う」ことです。

抵当権とは、住宅ローンを借りるときに担保として住宅の土地建物に対して設定される権利のことです。住宅ローンの借入れ時に金融機関が登記手続きをしているのが一般的です。

一括返済したら抵当権を抹消する手続き(抹消登記)が必要になりますが、これは自分で行う必要がありますので注意してください。

一括返済が完了すると、金融機関から抵当権抹消書類が送付されてくるので、この書類を持って法務局で手続きを行います。

詳しいやり方は法務局の「住宅ローン等を完済した」のページで確認しましょう。

6-2. 必要に応じて生命保険へ加入する

2つめの注意点は「必要に応じて生命保険へ加入する」ことです。

一括返済と同時に、住宅ローンの借入時に加入した団体信用生命保険(団信)の契約が終わります。

新たな生命保険への加入はどうするか、あらかじめ検討しておきましょう。

生命保険加入の必要性をどう考えるかは、それぞれの状況によって異なりますが、万が一の事態に備えるためには、何らかの保険には加入しておくことをおすすめします。

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まとめ

住宅ローンの一括返済とは、借り入れている住宅ローンの残高の全額をすべて返済し、借入金を完済することで、支払予定だった利息をカットし、支払総額を減少させる効果があります。

住宅ローン一括返済のメリットは以下のとおりです。

1.利息をカットして総返済額を減らせる
2.新たなローンの借入可能額を増やせる
3.保証料が返金されるケースがある

住宅ローン一括返済のデメリットは以下のとおりです。

1.手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る
2.返済手数料がかかる
3.住宅ローン控除が適用されなくなる
4.団体信用生命保険がなくなる
5.超低金利・インフレ下では効果が低い

住宅ローン一括返済の手続きの流れは以下のとおりです。

【STEP1】:借入れ金融機関に連絡する
【STEP2】:必要書類を金融機関に提出する
【STEP3】:残額を金融機関に支払う

住宅ローン一括返済をする際に注意したいポイントはこちらです。

1.抵当権抹消登記を忘れずに行う
2.必要に応じて生命保険へ加入する

なお、「一括返済はしないほうが良さそうだけれど、できるだけ利息をカットしたい」という場合には、残高の一部を早期に返済する繰り上げ返済がおすすめです。

詳しくは住宅ローンの繰り上げ返済について解説しているこちらの記事をご覧ください。

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