2022.04.25 更新
新築とリノベーションどちらがおすすめ?メリット・デメリットを比較
マイホームを考えるとき、新築するのがいいか、中古物件を購入してリノベーションするのがいいのか、迷っている人も多いのではないでしょうか?
新築とリノベーションのどちらにもメリット・デメリットがあります。
どちらにするかを考えるときには、両方を理解したうえで、自分たち家族がよりメリットを感じるほうを選ぶのがおすすめです。
そこでこの記事では、新築と中古住宅のリノベーションのメリット・デメリットを詳しく解説します。
そのうえで、新築とリノベーションがそれぞれどんな人におすすめなのかをご紹介しますので、ぜひご参考にしてください。
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[著者]
ゼロリノベ編集部
元銀行員・宅地建物取引士・一級建築士が在籍して「住宅ローンサポート・不動産仲介・リノベーション設計・施工」をワンストップで手がけるゼロリノベ(株式会社groove agent)。著者の詳しいプロフィール
新築のメリット・デメリット
まずは、新築するメリット・デメリットをご紹介します。
1-1. メリット
注文住宅を新築したり、新築一戸建てを購入したりするのには、2つのメリットがあります。
- 耐震性や省エネ性能への安心感や信頼感がある
- ローンや保険を組みやすいことが多い
順番に解説します。
1-1-1. 耐震性や省エネ性能への安心感や信頼性がある
新築された家は、耐震性への安心感や省エネ性能の高さ、信頼性を得られるのがメリットです。
家を新築するときには、現行の各種法令が定める基準に沿って建てる必要があります。法令は、時代にあわせて改定されるため、新しい家ほどより厳しい基準に沿って建てられることから性能が高くなります。
たとえば耐震基準は、2000年に建築基準法が見直されたことにより、基礎構造や壁の配置バランスなどについて、より高い耐震性能が求められるようになりました。
同じ年には「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」も施行され、「住宅性能表示制度」が導入されています。この制度では、耐震性や省エネルギー対策などを「等級」で示します。これにより、新築するときには家の性能を簡単に比較できるようになりました。
そのため各ハウスメーカーは、より高い性能の住宅を提供できるよう、耐震性や断熱性、劣化対策などの向上に力を入れるようになっています。近年政府がZEH住宅の普及に努めていることもあり、多くのハウスメーカーが導入を進めています。
ZEH(ゼッチ)住宅:高断熱の家にオール電化と太陽光発電を組みあわせるなどして、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す住宅
なお品確法では、新築住宅の構造体力上主要な部分や雨水の浸入を防ぐ部分などに関して、引き渡し後10年間瑕疵担保責任を負うことを義務付けています(同法第94条、第95条)。
新築すると、現時点での最新の耐震性や断熱性能などを備えた快適で安心して暮らせる家を手に入れられるうえ、構造体力上主要な部分や雨水の浸入を防ぐ部分については10年間の保証を受けられるのです。
【出典】
「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」(国土交通省)
「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」(経済産業省)
1-1-2. ローンや保険審査に支障がないことが多い
住宅ローンを組むときには、金融機関は土地や建物を担保とします。そのため、どのような物件なのかは審査結果を左右する重要な判断要素です。
国土交通省の調査*によると、ローンの審査項目に「担保評価」を入れている金融機関は全体の98.2%。そのうち約94%が「融資判断に影響する・参考にする」と回答しています。
しかし中古住宅は、物件によっては築年数が古くて現行の建築基準を満たしていない再建築不可物件だったり、現行の耐震基準を満たしていなかったりする場合があります。
多くの金融機関は、そのような物件への融資を制限しているので、住宅ローンやリフォームローンを組むのが難しいケースがあるのです。また、地震保険についても、耐震基準を満たしていないと保険料が高くなったり、入れなかったりする可能性があります。
その点新築物件は、現行の建築基準法に沿って建てなければ建築許可が下りないため、物件に問題があることは考えにくいでしょう。ローンや保険審査に通りやすいのが、新築のメリットです。
*【出典】「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する結果報告書|32頁」(国土交通省)
1-2. デメリット
家を新築するデメリットは2つあります。
- 大きな費用がかかる
- 好立地の土地や物件が見つけにくい
それぞれ内容を紹介します。
1-2-1. 大きな費用がかかる
一般的に新築は、中古物件をリノベーションする費用に比べると高くなるのがデメリットです。
国土交通省の「令和2年度 住宅市場動向調査報告書」によると、新築住宅と中古戸建て住宅の平均購入価格は以下のように報告されています。
※土地を購入した新築世帯
※ 注文住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏での調査
【出典】国土交通省「令和2年度 住宅市場動向調査報告書 (46頁)」
中古戸建てと比較すると、注文住宅は1,700万円、分譲住宅(建売住宅)でも1,000万円も高いことがわかります。また、2017年にリクルート住まいカンパニーが行った調査によると、中古戸建てを購入し、リフォームする人の平均リフォーム費用は708.2万円でした*。
中古戸建てを購入し、リノベーションに700万円費やしても、注文住宅で1,000万円、分譲住宅でも300万円も新築注文住宅のほうが高くつく計算です。
とくに注文住宅は間取りや設備などにこだわるほど、どんどん高くなってしまいます。分譲住宅は比較的安価ですが、すでにできあがっているため注文住宅やリノベーションのような自由度はありません。
さらに中古戸建ては、条件によってはもっと安価に購入できる可能性があります。そのため場合によっては、さらに価格差が開くこともあるでしょう。
*【出典】「2017年 大型リフォーム実施者調査|9頁」(株式会社リクルート住まいカンパニー)
1-2-2. 好立地の土地や物件が見つけにくい
新築住宅を購入しようと考えても、好立地の土地や建売住宅を見つけにくいのもデメリットです。
住宅は、駅前や商業エリアなど、条件のいいところから建てられていくのが一般的です。そのため駅近や大型商業施設に近いような好立地の土地を見つけるのは、なかなか難しくなります。
また、好立地であるほど、土地の価格は高くなります。土地は買えるけれども、希望する広さや間取りの家は建てられない……となる可能性もあるのです。
リノベーションのメリット・デメリット
ここからは、中古物件を購入してリノベーションするメリット・デメリットをご紹介します。
2-1.メリット
中古物件を購入してリノベーションするメリットは、以下の2点です。
- トータルの費用を抑えやすい
- 物件数が多く探しやすい
- サステナブルで環境負荷が低い
順番に解説します。
2-1-1.トータルの費用を抑えやすい
中古物件を購入してリノベーションするメリットは、注文住宅を新築するよりも、トータルの費用を抑えやすくなることです。
同じような立地や広さの新築戸建てと中古戸建てを比較した場合、基本的には新築戸建てのほうが高くなります。住宅は、築年数とともに、価格が下がっていくためです。
下表は、東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」が、レインズ(不動産流通標準情報システム)に登録された戸建て住宅の築年数ごとの売り出し物件価格を調査したものです。
<中古戸建住宅新規登録状況>
東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)(5頁)」
築0〜5年から築16〜築20年までの下げ幅は約2,000万円と大きいものの、築20年以降は大きく変動していません。
中古戸建ては築20年前後で建物の資産価値はなくなるとされているため、評価額が下げ止まるのです。そのため中古戸建てを購入するなら、このあたりの物件を購入するのがおすすめです。その後も大きく価格が下がらないので、再売却するときも、大きな損失なく手放せます。
また、築20年までの物件は、2000年に改定された現行の耐震基準にも沿っているので、耐震性の心配もありません。さらに住宅性能表示制度導入後なので、一定の住宅性能も期待できます。大がかりな耐震補強工事や断熱工事などが必要なければ、コストを抑えたリノベーションを実現できます。
なお、2020年度に住宅金融支援機構が行った調査によると、首都圏における土地付き注文住宅の所要資金と中古マンションの所要資金を比較すると以下のようになります。
<首都圏における住宅の所要資金>
住宅金融支援機構「2020年 フラット35利用者調査」(10頁、11頁)
中古マンションを購入し、+1,000万円でフルリノベーションを行ったとしても、土地付き注文住宅を購入するのに比べ916万費用が抑えられることになります。
自由度の高い工事を実現しつつ、費用はなるべく抑えたいという場合には、中古マンションのリノベーションの方が向いているでしょう。
中古マンションのリノベーションを検討する場合も、築20年程度の物件をおすすめしています。築年数による中古マンションの選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
2-1-2.物件数が多く探しやすい
中古住宅は新築物件に比べて流通数が多く、好立地のエリアでも物件が探しやすいのがメリットです。
東京カンテイによる「新築・中古マンションの市場動向レポート(2021年第3四半期)」によると、2021年の第3四半期における新築マンション供給戸数が8,799件なのに対し、中古マンション供給戸数はその5倍にあたる40,034件となっています。築20年以内の物件で絞った場合でも、13,792件の供給数があります。
<首都圏における供給戸数>
東京カンテイ「新築・中古マンションの市場動向レポート(2021年第3四半期)」
探す対象が増えれば、立地条件など希望に合う物件が探しやすくなるでしょう。
2-1-3.サステナブルで環境負荷が低い
リノベーションは新築と違い、サステナブルで、環境負荷が低いのもメリットです。
日本においては、新築が好まれる傾向から、これまで不動産産業では建物寿命の半分ほどで建て直すケースが多くみられました。しかし近年、産業廃棄物の多さや空き家が社会問題化し、スクラップ&ビルドの住宅事情を見直す動きが政府主導で進んでいます。
2021年には、新たな「住生活基本計画」が閣議決定され、そのなかでもライフスタイルに合わせた柔軟な住み替えを可能とするために、既存住宅(中古住宅)の流通を活性化することなどが目標として盛り込まれました。
住宅リフォームに対する税金の減税制度も多く用意されるなど、支援体制も整っています。これからは欧米諸国のように、既存住宅をリフォームやリノベーションしながら、大切に住み続けるのがトレンドになるのかもしれません。
「新たな住生活基本計画の概要|4頁」(国土交通省)
2-2.デメリット
中古住宅を購入し、リノベーションして住むのには、以下のデメリットがあります。
- 住宅ローンの審査が厳しい場合がある
- 物件の寿命は変わらないことが多い
どのような内容かご紹介します。
2-2-1.住宅ローンの審査が厳しい場合がある
中古住宅の購入時に住宅ローンを組むときに、審査が厳しくなる場合があります。
住宅ローンでは、購入する中古物件を担保にしますが、中古住宅は新築時よりも価値が低いため、希望の金額を借り入れられないかもしれません。
また、築年数が古ければ、現行の建築基準法に違反していないか、確認が必要になる場合もあります。
土地の境界線は確定しているか、再建築不可物件ではないか、新耐震基準を満たしているかなどがチェックされ、審査基準に満たないときには、減額されたり、借り入れを断られたりする可能性があるのです。
2-2-2.物件の寿命がリセットされる訳ではない
中古物件は、リノベーションしたとしても、建物構造から新築同様になるとは限りません。もちろん状態は良くなりますが、築40年の物件を補強したとしても、住宅年齢がゼロにリセットされるわけではないのです。
さらにあまりに古い物件であれば、リノベーションにより寿命を延ばすために、基礎まで含むような大がかりな耐震補強工事などが必要になる可能性も考えられます。その場合、結局新築したほうが安かった、といったことにもなりかねません。
特に戸建ての場合はそのような事態を避けるために、中古物件の購入に際しては、インスペクション*を行い、物件の状態を確かめることが大切です。そのうえで、完成後の物件に何年間住めるのかを考えて、判断すると良いでしょう。
*インスペクション:建築家など住宅の専門家(インスペクター)が行う住宅診断のこと
国土交通省がまとめた「RC造(コンクリート)の寿命に係る既住の研究例」によると、鉄筋コンクリート造(RC造)の物理的な寿命は117年といわれています。
マンションは比較的長寿命ですが、個人でメンテナンスできないことから長期修繕計画や住民の管理意識によって寿命は左右されてしまいます。
マンションの購入時に住民の管理意識を確かめるためには、マンションの過去の修繕履歴や今後の大規模修繕実施予定やその内容、修繕積立金の収支・予算などを確認することが大切です。
新築とリノベーションどちらが良い?
新築とリノベーションのメリット・デメリットをご紹介したところで、「じゃあ我が家にはどちらがいいの?」と思った人もいるのではないでしょうか?
新築のほうがおすすめの人・中古物件をリノベーションするほうがおすすめの人をまとめてみました。
3-1.新築のほうがおすすめの人
新築のほうがおすすめなのは、以下のような人です。
- できるだけ長く住みたい人
- 最新の設備、仕様について妥協したくない人
それぞれご説明します。
3-1-1.できるだけ長く住みたい人
これから同じ物件に長く住みたいと考えている場合は、新築のほうが安心です。
建物には寿命があり、古い物件をどれだけリフォームしても限界があります。木造住宅の寿命は約65年といわれていますが、たとえば現在築40年の中古住宅をリノベーションしても、住宅年齢がリセットされて、そこからさらに65年住み続けられるわけではありません。
その点新築であれば、近年は長期優良住宅(等級3)など3世代75〜90年住み続けられることを前提に建てられる家もあります。
ただし、住宅年齢はメンテナンスによって大きく左右されます。新築であっても、定期的にメンテナンスを行わなければ、寿命が短くなる点には注意しましょう。
「中古住宅の建物評価の実態<参考資料>|7頁」(国土交通省)
「『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』の長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について|5頁」(国土交通省)
3-1-2.最新の設備、仕様について妥協したくない人
間取りや最新の設備、仕様に徹底的にこだわりたい人は、新築の注文住宅またはマンションが向いています。
中古物件のリノベーションでも最新の設備を入れることは可能ですが、例えば以下のような部分は古い設備を活かした工事をする必要が出てくるケースがあります。
◎中古マンションの場合
共有部分とされる玄関ドア、窓、サッシなどは工事の対象範囲外となるため、既存の設備を活かす必要がある。
◎中古戸建ての場合
どうしても構造上抜けない耐力壁と呼ばれる壁や柱があり、完全に自由な間取りや仕様とはならない。
その点、新築の注文住宅であれば、何の制限もなく自由に間取りやデザインを決められます。また、新築マンションであれば、中古であれば交換できない玄関ドアなども新品のものを使用できます。
キッチンなどの水まわりや動線、窓、ドアなどにまでこだわり、自分のイメージどおりの家に住みたい人は、新築を選ぶのがおすすめです。
3-2.中古物件をリノベーションするほうがおすすめの人
新築ではなく、中古物件をリノベーションするのがおすすめなのは、以下のような人です。
- 費用を抑えたい人
- 自分の暮らしにあった間取りにこだわりたい人
順番にご紹介します。
3-2-1.費用を抑えたい人
リノベーションのメリットでもご紹介したように、中古物件をリノベーションしたほうが、新築するよりもコストを抑えられる傾向があります。
また、建物の価値の下がり方が、新築に比べると穏やかなので、いずれ売却することになった場合でも、資産価値が下がりにくいのもメリットです。
とくに築15〜20年程度の物件は、価格が下げ止まり安価で購入できるうえ、住宅性能は一定レベルであると期待できます。質のいい中古物件を低価格で購入できれば、新築しなくてもリノベーションで理想の家を実現できます。
さらにリノベーションで付加価値をつけることで、より物件自体の価値を底上げする再販価値の高い物件に変えることも可能です。
3-2-2.自分の暮らしに合った間取りにこだわりたい人
「新築ほど費用はかけたくないけれど、自分の暮らしに合った間取りにこだわりたい」という人も、中古物件を購入してリノベーションするのがおすすめです。
注文住宅の場合、ゼロから住まいをつくるため選択肢が多く、予算はどんどんふくらんでしまいがちです。その点中古物件であれば、既存の間取りを活かしつつ、予算と構造上の制限のなかでできるベストのプランを考えられます。
そのため、費用を抑えつつ、ライフスタイルに合った居住空間や内装を楽しみたい人は、中古物件のリノベーションを検討すると良いでしょう。
まとめ
新築とリノベーションには、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらが良いかを考えるときには、両者を比較したうえで、自分たちにとってどちらのメリットが大きいかを考えて選ぶことが大切です。
基本的には、資金に余裕があり、自分たちの理想をすべてかなえたいなら新築を選ぶと良いでしょう。ただし、好立地の土地や物件を見つけるのは難しいかもしれません。
一方、予算を抑えつつ、自分たちの暮らしにあった間取りを考えたい人は、中古物件を購入してのリノベーションが向いています。ただし物件を選ぶときには、インスペクションを受けるなどして物件の状態をよく確認することが大切です。
なお、ゼロリノベでは、すでに物件をお持ちの方向けの「ご自宅をリノベーション」のほか、物件探しから始める方向けの「物件探し×リノベーション」も提供しています。
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