2023.03.08 更新 2020.11.26 公開
マンション修繕費とは?修繕積立金が値上げする理由や平均相場を解説

マンション修繕費とは、文字通りマンションを修繕する(壊れたり劣化したりしたものを直す)ための費用をいいます。
修繕費は一度に何百万円単位でかかるため、毎月修繕積立金という名目で徴収し、必要な時までお金をプールしておく必要があるのです。
この記事をお読みの方の中には、「マンション修繕積立金が高い」などマイナスイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかしマンション修繕積立金は、適切にマンションの大規模修繕を行うためには欠かせない費用です。
この記事では、マンション修繕費・修繕積立金とは何か?を説明した後、費用相場や値上がりする理由などを詳しく解説していきます。
▼この記事で分かること
◎マンションの修繕積立金とは、20年後30年後を見据えた修繕費用
何百万もかかる大規模修繕を行うため、毎月少しずつ積み立てていく必要がある
◎マンションの修繕積立金の相場は月額1.1万円
ただし、新築時~築浅時には6,654円で、その後だんだん高くなる傾向がある
◎マンションの修繕積立金が値上がりする5つの理由
- 新築時には修繕積立金が安く設定されているから
- 「段階増額積立方式」を採用しているから
- ガイドラインが2008年まで無かったから
- 築年数が経つにつれて修繕費が足りなくなるから
- 修繕費の相場が上昇しているから
これからマンションを購入しようと考えている方は、毎月支払うマンション修繕費についてしっかり理解していきましょう。
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マンションの修繕費・修繕積立金とは?
冒頭でも解説した通り、マンション修繕費とは文字通り、マンションを修繕する(壊れたり劣化したりしたものを直す)ための費用のことです。
ただし大規模な修繕を行う場合には一度に何百万円単位で必要となるため、毎月少しずつ徴収して貯めておきます。これを、修繕積立金といいます。
住宅ローンを組んでマンションを購入した場合、ローン返済額以外にこの修繕積立金や管理費が毎月かかり、負担が大きいと感じる方も多いかもしれません。しかし修繕積立金は、10~15年を目途に行われる大規模修繕に備えるための大切な費用といえます。
具体的には、以下のようなもののために積み立てる費用です。
- 10〜15年ごとに行われる大規模修繕の費用
- 外壁の改修工事
- 屋根、屋上の防水改修工事
- 外装、内装、階段の手すりなどのペンキ塗り替え
- 敷地内駐車場や駐輪場の補修、増設費など
- 給排水管の取り替え工事費
- 受水槽の取り替え工事費
- 台風、地震など自然災害による損傷の修繕
- 集合ポストの取り換え
- その他、共用部分の変更や改修工事
一方、修繕積立金と同じように毎月支払う「管理費」は、日々の管理に使う費用です。
マンション管理費との違い
マンションの管理費と修繕費には、以下のような違いがあります。
管理費 | 修繕費(修繕積立金) | |
概要 | 分譲マンション(主に共用部の)の日常的な維持管理をするための費用 | 分譲マンションを修繕する(壊れたり劣化したりしたものを直す)ための費用 |
支払う
タイミング |
毎月 | 毎月 |
使われる
タイミング |
毎月 | 使わずに積み立てておき、修繕が必要になった箇所または大規模修繕の時に使う |
費用の目安 | 毎月1.5万円~2万円程度 | 毎月1万円~1.5万円程度
(詳しくは次章で解説) |
マンション管理費は日常的な管理のための費用、修繕費(修繕積立金)は修繕が必要になった時のために積み立てておくものと理解すれば分かりやすいでしょう。
マンション修繕費(修繕積立金)の費用相場
ここからは、マンションの修繕積立金の金額について詳しく見ていきましょう。
3-1. マンション修繕積立金の平均金額は月額1.1万円
国土交通省の調査によると、1戸あたりのマンション修繕積立金の平均は、平成30年度で月額11,243円となっています。ただしその金額を完成年次別に見ると、築年数によって修繕積立金の平均がかなり異なることが分かります。
完成年次 | 月/戸当たり修繕積立金の額 |
全体平均 | 11,243円 |
昭和44年以前 | 26,356円 |
~昭和49年 | 9,903円 |
~昭和54年 | 12,052円 |
~昭和59年 | 11,077円 |
~平成元年 | 11,400円 |
~平成6年 | 11,413円 |
~平成11年 | 12,024円 |
~平成16年 | 11,227円 |
~平成21年 | 11,865円 |
~平成26年 | 9,244円 |
平成27年以降 | 6,654円 |
不明 | 10,904円 |
出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」管理組合向け調査の結果
修繕積立金の全体平均は1.1万円程度なのに、平成27年以降に建てられた新築・築浅のマンションは6,654円程度と安く、築4~9年のマンションは9,244円、築9~14年のマンションは11,227円と段々金額が上がっていることが分かります。
実は、販売会社が月額負担を低く見せるために、新築物件では修繕積立金をあえて低く抑えているケースが多くあるのです。修繕積立金の全体平均は1.1万円程度なので、新しいマンションは最初だけ金額が低く抑えられていることを認識しておくと良いでしょう。
3-2. マンション修繕積立金には適正価格が決められている
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、マンション修繕積立金の目安となる計算方法が定められています。
- 【修繕積立金の月額目安】= 専有床面積当たりの修繕積立金の額 × 購入予定のマンションの専有床面積 + 機械式駐車場の修繕工事費 × 駐車場数 ÷ 住戸数
正確には専有床面積当たりの修繕積立金の額を当てはめていく必要がありますが、ざっくり言うとだいたい「1平方メートルあたり200円」が目安となります。つまり、50㎡の部屋なら10,000円、70㎡の部屋なら月額14,000円が修繕積立金の適正金額となります(機械式駐車場の部分を除く)。
ただし、新築時は修繕積立金が安く段階的に値上げしていくマンションも多いので、あくまで目安として考えておいた方が良いでしょう。
3-3. マンション修繕積立金は長期修繕計画によって決まる
マンションの修繕積立金の金額は、マンションの住人によって構成される管理組合が独自に決めるものです。
理想の形としては、長期修繕計画(将来見込まれる修繕費や時期などを盛り込んだ計画)に基づいて、将来必要とされる修繕費用によって金額が決まるべきものです。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」にも、12年・15年・30年といった「長期修繕計画」に基づいて修繕積立金を設定するべきということがハッキリと書いてあります。
例えば築後30年間に必要な修繕工事費が522万円(一戸当たり)だった場合、その費用を30年間均等に月額14,500円(年額174,000円)積み立てる必要がある、というふうに計算します。
ただし、このガイドライン通りに正しく修繕積立金が設定されているとは限らず、国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、「長期修繕計画で算出された必要額に基づいて修繕積立金を決めた」マンションは72.5%でした。
「管理費の一定割合とした」「近隣の金額を参考に決めた」「分譲時の設定のままになっている」というマンションもあり、こうしたマンションでは大規模修繕の前後で積立金が足りなくなるケースも考えられるため、一度長期修繕計画の有無を確認してみることが大切です。
マンションの修繕積立金が上がる5つの理由
マンションの修繕積立金は、年数を経るごとに値上がりすることが多いものです。なぜ値上がりするのか、5つの理由を解説していきます。
4-1. 新築時には修繕積立金が安く設定されているから
3章で説明した通り、新築マンションでは、分譲時に販売しやすいよう修繕積立金の金額が低く設定されていることが多々あります。そこから、実際に建物が古くなるにつれて必要となる費用がハッキリした時点で修繕積立金の額が改定されます。
そのため、新築時や築浅のマンションは当初は安く、年々値上がりする傾向があります。
4-2. 「段階増額積立方式」を採用しているから
修繕積立金には「均等積立方式」と「段階増額積立方式」があり、「段階増額積立方式」を採用している場合は、10年などの単位で修繕積立金が上がることが前提の方式です。つまり、何年かごとに必ず値上げすることとなります。
【均等積立方式】 | 【段階増額積立方式】 | |
概要 | 計画期間中、均等に積み立てる方式 | 10年などの単位で徴収する修繕積立金が上がる方式 |
メリット | 長期にわたって金額の変更がないため、将来的にいくら払うか分かりやすい | 新築時には修繕積立金の金額が安い |
デメリット | 築年数が浅いうちは、段階増額に比べて割高になる | 築年数が古くなるほど修繕積立金の負担が重くのしかかってくる |
なお、国土交通省は「均等積立方式」を推奨していますが、未だにほとんどのマンションでは「段階増額積立方式」を採用しています。
4-3. ガイドラインが2008年まで無かったから
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、長期修繕計画の策定方法などが定められていますが、実は2008年までガイドラインがありませんでした。
目安とされる金額がなかったため、以前は修繕積立金は適正価格よりも低く設定されることもあったようです。2008年にガイドラインができてから、適正な金額の徴収がされ始めるようになり、全体的な修繕積立金の相場が上がったと考えられます。
4-4. 築年数が経つにつれて修繕費が足りなくなるから
修繕積立金は、築年数が上がるにつれて上がる傾向があります。
例えば、大規模修繕工事を行う前に積み立てた修繕費が足りなくなって修繕費が上がるなどが考えられます。また築年数が40年を超えてくると、経年劣化した共用部分を補修することが続き、修繕費が足りなくなるケースがあります。
修繕費が足りなくなった場合は、次の大規模修繕工事や他の修繕費に必要な金額をまかなうために、修繕積立金の額を増やす必要が出てきます。
4-5. 修繕費の相場が上昇しているから
修繕費の相場が上がっていることも、修繕積立金が値上がりする原因のひとつです。
修繕を担当する職人の高齢化が進み、労働人口が減っていることもあり、人件費が高騰しています。加えて材料費や重機のリース代など工事費が上がっています。そのため大規模修繕を行うための修繕費が足りなくなり、修繕積立金を値上げせざるを得なくなります。
マンションの修繕費・修繕積立金に関するQ&A
マンションの修繕費と修繕積立金についてのよくある質問をまとめました。
5-1. マンションの毎月の修繕積立金は安ければ安いほど良い?
- 【答え】修繕積立金が安すぎると修繕費がまかなえなくなるため危険です。
ここまで説明した通り、マンションの修繕積立金は大規模修繕や不測の修繕のために必要不可欠なお金です。修繕積立金が安いと毎月の出費を抑えられるためお得だと感じるかもしれませんが、実は逆にとても危険なことだといえます。
マンションを住みやすい安全な状態に保つには、10~15年ごとに適切な大規模修繕をする必要があります。そのための修繕費が足りなければ適切な修繕ができず、マンションが劣化してしまうことになります。
また、十分な積立金がなければ天災などによる不測の修繕にも対応できず、こちらも劣化する原因となります。
5-2. マンションの修繕積立金が値上がりするのを阻止できる?
- 【答え】管理組合の総会で反対多数であれば阻止は可能ですが、必要な値上がりなら受け入れた方が良いでしょう。
マンション全体に関わる事柄は必ず管理組合の総会で議題が挙げられ、住民の賛成多数または反対多数によって決定されます。
修繕積立金の値上げについても、反対多数となれば却下すできます。(※管理規約の内容によっては、4分の3以上の賛成で可決となる場合もあります。)
ただし、今後必要となる修繕費用をシミュレーションしたうえで値上げ案が示されているのならば、修繕積立金の値上げを阻止すると資金がショートする可能性が高いでしょう。
修繕費が足りなくなれば一時金の徴収が発生したり、工事実施時期を先送りしたりすることになり、後々別の問題が発生しかねません。
5-3. マンションの修繕積立金を滞納するとどうなるの?
- 【答え】管理組合から電話や内容証明で督促されることになります。
マンション修繕積立金を滞納している住人がいる場合、管理組合が滞納者に電話で督促を行い、それでも滞納が続く場合は内容証明で支払いを請求します。
それでも支払われない場合は、悪質な滞納者として、口座の差し押さえや競売によって滞納分を回収することもあります。
5-4. マンションの修繕積立金は返金(返還)されるの?
- 【答え】いかなる場合も修繕積立金は返金(返還)されません。
マンションを購入してから日が経っていない場合は、まだ大規模修繕が行われていないかもしれません。この場合、「まだ使われていない修繕費は返金してもらえるのかも」と思う方もいらっしゃるようです。
しかし、マンションの修繕積立金はいかなる場合も返金(返還)されることはありません。あなたが住んでいた部屋に住む新しい買主は、売主が積み立ててきた権利も含めて物件を購入することになります。
5-5. マンションの修繕積立金は老後でも払い続けるの?
- 【答え】住み続ける限り、マンション修繕積立金を払う必要があります。
ここまで解説した通り、マンションの修繕積立金は大規模修繕をするためにマンションの住民全員で積み立てていくもので、入居の年数に関係なく一律負担するものです。
「ずっと払っているから」「もう住宅ローンを払い終わったから」ということとは全く関係なく、住み続ける限り払い続ける必要があります。
まとめ
この記事では、マンション修繕費(修繕積立金)とは何かから、修繕費(修繕積立金)の値段にまつわるさまざまなことについて解説してきました。
マンション修繕積立金が何に使われる金額なのか、なぜマンション修繕積立金は値上がりするのかなど、さまざまな疑問を解決できたでしょうか。
毎月かかってくるお金なので「できれば修繕積立金がもっと安ければ良いのに」と思う気持ちは理解できます。しかし長期修繕計画に必要な修繕費をまかなうために、毎月しっかりと積み立てていくことが大切です。
マンションをこれから購入する人も、すでにマンションに住んでいる人も、物件の長期修繕計画をしっかりチェックして、修繕積立金の金額が適正なものかどうか一度チェックしてみると良いでしょう。