「マンションでも楽器を弾ける防音室が欲しい」
「マンションに防音室ってつくれるのかな?」
そんな疑問をお持ちではないでしょうか。
結論から言うと、マンションに防音室をつくることは可能です。
マンションにつくることができる防音室は、遮音性の高さや費用、工事の規模などによって、以下の3種類に分けられます。
- 一室丸ごとリフォーム工事する
- 組み立て式防音室を設置する
- 壁に吸音材や遮音シートを入れる
マンションに防音室を作りたい場合は、上記の3種類の中から、求める防音性の高さや、設置するマンションの利用規約や階数などによって、最適な方法を選ぶ必要があります。
ここで注意しておきたいのが、防音室は特殊な設備であるため、基本情報やどんな人にどんな設備が向くのかを正しく把握しておかないと、自分に合った防音室をつくることができないという点です。
しかし、費用がかかることですので、作った後で、やっぱり自分の求める防音性が満たされなかった…ということになっても、気軽にやり直すことはできません。
そこで、後悔しない防音室づくりができるよう、この記事では、マンションにつくることができる防音室に関する基本情報や、上記3種類の費用・工事期間の違い・事例についてご紹介します。
さらに、マンションに防音室を作る際の注意点もお伝えしますので、この記事を最後までお読みいただければ、失敗せずに自分に合った防音室を作ることができます。満足のいく防音室づくりに役立てて頂けますと幸いです。
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[著者]
ゼロリノベ編集部
元銀行員・宅地建物取引士・一級建築士が在籍して「住宅ローンサポート・不動産仲介・リノベーション設計・施工」をワンストップで手がけるゼロリノベ(株式会社groove agent)。著者の詳しいプロフィール
マンションの防音室とは?種類別に解説
冒頭でもご説明しましたが、マンションに防音室をつくる方法は3種類あります。それぞれの特徴は以下の通りです。
1.一室丸ごとリフォーム工事する
1つ目の方法は、部屋そのものを、しっかり防音されるようにリフォーム工事するというものです。
その部屋の壁や床、天井、窓などの材質を、音を伝えにくい素材に張り替えたり、防音能力の高いものに変更したりします。そうすると、学校の音楽室や視聴覚室のようなイメージで、内部で大きめの音を出しても外部に漏れないようになります。
部屋を上下左右全て工事しますので、楽器の中でも最も大きな音や振動が出るドラムや、ベースギターのような音が広がりやすい低音の楽器の場合でも、外へ響く音や振動をかなり軽減することが可能です
2.組み立て式防音室を設置する
2つ目の方法は、メーカーから出ている、大きな箱状の防音室ユニットを設置するというものです。
決められたサイズの箱を設置するだけですので、部屋ごとリフォーム工事をする場合よりは手軽に導入することができます。部屋が狭くなってしまうことや、箱状になっているため多少の閉塞感があるというデメリットはありますが、大規模な工事は不要ですので、マンションの利用規約上「部屋丸ごとのリフォームは難しい」という場合でも、防音が可能です。
防音性能の高さはユニットの種類によって異なりますが、一般的なものであれば管楽器やピアノなどの楽器の音は抑えることができますし、より性能の高い組み立て式防音室の場合は、ドラムなどの非常に大きな音が出る楽器にも対応できます。
3.壁に吸音材や遮音シートを入れる
3つ目は、壁厚を増やして中に防音効果のある素材(吸音材や遮音シート)を入れることで簡易的な防音室を作るという方法です。
「楽器を演奏するほどではないが、外部への音漏れを気にすることなく少し大きめの音量で映画を観たい、特定の部屋の壁の防音性能を高めたい」などの場合におすすめです。先の2つの方法と比べると防音性は落ちますが、多少の音であれば低減することができます。
そのほか、「防音室をつくるほどではないが、大通りに面しているため外からの音を防ぎたい」ということであれば、窓に二重サッシを取り付けるだけでも効果があります。防音効果に優れ、結露防止にも役立ちます。
上階の床音などを防ぎたい場合は、寝室など、音を防ぎたい箇所に特殊な天井を作ることで音を緩和するという方法もあります。
マンションにつくる防音室の比較【費用・工事期間・事例】
マンションにつくることができる防音室の基本情報として、3つの種類があるということが分かりましたので、次はそれぞれの違いを見ていきましょう。
自分に合った防音室を失敗せずにつくるためには、それぞれにかかる費用や工事期間、事例などをしっかり把握してから選ぶことが重要だからです。
そこで、この章ではマンションにつくることができる防音室の違いを比較できるよう、それぞれの特徴をお伝えいたします。
マンションにつくる防音室の費用比較
マンションにつくる防音室の費用比較は以下となります。
種類 | 一般的な遮音性の防音室の場合(管楽器やピアノなどに対応) | より遮音性の高い防音室の場合
(ドラムも対応可) |
一室丸ごとリフォーム工事する | 200~300万円 | 400~600万円 |
組み立て式防音室を設置する | 50~230万円 | 260~300万円 |
壁に吸音材や遮音シートを入れる | 17~30万円 | – |
部屋の広さやどこまでの防音性を求めるかによって費用は異なるため、上記のように幅があります。それぞれの場合の詳しい費用は以下で解説いたします。
1.一室丸ごとリフォーム工事する:200万円~600万円
最も大掛かりな工事となるため、その分費用も高額になります。
フルートやピアノなどの楽器の音や、ステレオの音を防止できれば良い、という一般的な防音性を求めるリフォーム工事であれば、6畳程度で200~300万円ほどになります。
一方、ドラムなどの大きな音や重低音を防ぐほどの防音性を求める場合は、より性能の良い素材を使用したり、壁を厚くする必要があるため、その分費用も高くなり、6畳程度の部屋をリフォームする場合で400~600万円ほどかかります。
また、木造や鉄骨(S造)などの元々防音性が低い建物の場合、より強固な防音工事をする必要があるため、鉄筋コンクリート(RC)や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)の建物よりも、50万円程度費用が増えることがあります。
2.組み立て式防音室を設置する:50万円~300万円
組み立て式防音室も、部屋の広さと防音性能の高さによってその費用は異なります。
管楽器やピアノなどの音を低減させたい、オーディオルームやシアタールームにしたい、という場合は、50~230万円が目安となります。
最もリーズナブルなもので、0.8畳で約50万円の組み立て式防音室があり、これはピアノなどの大型の楽器を置くには狭いのでフルート奏者などに向くタイプとなります。グランドピアノの場合は3畳以上がおすすめです。
<一般的な遮音性の防音室の場合(管楽器やピアノなどに対応)>
組み立て式防音室の広さ | 費用 |
0.8畳 | 50~70万円 |
3畳 | 100~150万円 |
4.3畳 | 130~230万円 |
さらに高い防音性が必要なのが、ドラムのような、音が大きく重低音が響く楽器です。その場合は、より遮音性の高いタイプの防音室ユニットを設置する必要があります。費用は以下の通り、一般的な遮音性の防音室ユニットよりは高額になりますが、その分しっかりと音の漏れを防止することができます。
<より遮音性の高い防音室の場合(ドラムにも対応)>
組み立て式防音室の広さ | 費用 |
3.4畳 | 約260万円 |
4.6畳 | 約300万円 |
上記のように、既に販売されているユニットを購入して組み立てるだけという組み立て式防音室の場合、一室丸ごとリフォームをする場合と比較すると半分~2/3程度の費用で導入することができます。
3.壁に吸音材や遮音シートを入れる:17万円~30万円
最も低コストで導入できるのが、壁の中に吸音材や遮音シートなどを入れる簡易的なリフォームです。壁内部の石膏ボードを二重にすると、より防音性を高めることができます。
また、換気口経由で音が漏れるのを防止するために換気口の部品を取り換えたり、ダクトに吸音材を設置するという方法もあります。
部屋の広さや使用する素材の種類にもよりますが、壁のリフォームで15~25万円、換気口のリフォームで2~5万円程度というのが費用の目安です。
マンションにつくる防音室の工事・設置期間比較
費用だけでなく、防音室をつくりたいと思ってからどのくらいの期間で使えるようになるのかも気になりますよね。防音室の完成までにかかる期間は以下の通りです。
種類 | 工事や設置にかかる期間 |
一室丸ごとリフォーム工事する | 1~3週間 |
組み立て式防音室を設置する | 半日 |
壁に吸音材や遮音シートを入れる | 1~3日 |
1.一室丸ごとリフォーム工事する:1~3週間
工事そのものにかかる期間は、工事内容にもよりますが、1~3週間程度が目安となります。
ただし、一室丸ごとリフォームをする場合は、工事を始めるまでの間にも下記のように事前打ち合わせ等に時間がかかりますので、2か月以上は見ておく必要があります。
工程 | 期間 |
業者へ問い合わせ | 2~3日 |
打ち合わせ、現地調査 | 1週間 |
プランの提案を受ける | 1週間 |
見積もりをもらう | 2~3日 |
契約 | 1日 |
工事準備 | 1~3週間 |
工事 | 1~3週間 |
引き渡し | 1日 |
上記は一例となり、工事内容や業者によって流れや必要な期間は異なることがありますが、実際に使いたい日の3か月ほど前には問い合わせをし始めると安心でしょう。
2.組み立て式防音室を設置する:半日
組み立て式防音室は、既に完成されているユニットを購入して設置するだけですので、設置作業そのものは半日程度で完了します。そのため、長期間自宅で暮らせない期間が発生する、などの不便がありません。
ただし、種類によっては受注生産でしか取り扱っていなかったり、在庫が切れているということもありますので、購入日翌日に自宅に届くようなものではありません。
購入前には実際に現物をショールームなどでチェックしてから設置することになりますので、設置完了までにかかる期間としては、以下のように1か月と少しの期間を見込んでおくと良いでしょう。
工程 | 期間 |
ショールーム見学・相談・購入 | 1~3日 |
購入~納品 | 1週間~1ヶ月 |
納品・到着・設置 | 1日 |
3.壁に吸音材や遮音シートを入れる:1~3日
最も簡易的な方法である壁のみのリフォームで、工事自体は1~3日で完了することが多いです。
ただし、業者に作業してもらう必要があるため、見積もりや打ち合わせ・スケジュール調整などに時間がかかることと、使用する素材の在庫状況によっては発注後すぐに取り寄せられないという可能性もあります。
そのため、全部で1ヶ月程度の期間は見積もっておくと良いでしょう。
マンションに防音室をつくった事例
費用と期間がわかったところで、防音室をつくる場合の全体像が見えてきたのではないでしょうか。そこで次は、実際にマンション内に防音室を作った方の事例をご紹介します。実例を知ることで、よりイメージを明確にしていきましょう。
一室丸ごとリフォーム工事した事例
中古マンションをフルリノベーションして、ひとつの部屋を丸ごと防音室にした方の事例です。
住居の中心にしっかりとした厚い壁の防音室が設けられており、いつでも好きなだけギターを弾きたいという願いを叶えることができました。
部屋ごとリフォームする場合は、壁紙や内装のテイストを自分好みにすることができますので、機能的に音を遮断するだけでなく、中で過ごすと気分が高まるお気に入りの空間をつくることができますね。
よりこだわりの空間をつくりたいという方におすすめの方法です。
また、こちらもフルリノベーションして音楽室を造作した事例です。