更新:2023.06.16

柱と梁を味方にして自分だけの空間に!キホン知識と良質アイデア5選

柱と梁を活かしたリノベーション

変な場所に柱がある物件や、天井の大きな梁に圧迫感を感じる物件。

柱と梁は構造上動かすことができないため、そういった物件に出合ったとき、住み心地や間取り変更する際の制約などが気にかかりますよね。

しかし、柱や梁はリノベーションアイデアの呼び水になることこそあれ、大きな制約にはならないケースがほとんどです。

また、間取図を見る際など、柱と梁に注目することで、室内のイメージや特徴をつかむ手がかりにすることもできます。

この記事では、マンションにはつきものともいえる柱や梁に焦点をあてることで、いままでとは違った目線での物件の読み解き方や、制約をアイデアに変える方法を紹介します。

読み終わる頃には、柱や梁から物件の特徴をイメージできたり、存在感が気になる物件に出合った際に「どう活かせるかな」といったワクワクした目線で見ることができるようになりますよ。

目次

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    1.ほとんどの中古マンションは柱・梁のある「ラーメン構造」

    柱と梁

    多くのマンションには、写真のような梁や柱が存在します。

    しかし、マンションには「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類が存在し、梁や柱が存在するのは「ラーメン構造」で建てられた物件だけです。

    どちらの構造で建てられたかによって、実は、室内の特徴やリフォームやリノベの制限が異なります。

    物件を見るときに、マンションの構造に注目することで、特徴や制約をイメージすることが可能になります。

    間取図や写真から簡単に判断することができますので、「この物件はラーメン構造だから梁や柱があるはず」といった玄人目線で見極められるよう、まずはその違いを知っておきましょう。

    1-1.マンションの構造は「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類

    柱と梁で支える「ラーメン構造」

    マンションの構造のうち、圧倒的多数派は「ラーメン構造」です。

    「ラーメン」という言葉は、ドイツ語の「額縁」や「枠」に由来します。垂直方向に建つ「柱」と、柱同士をつないで水平方向にかけられる「梁」を一体化して接合した、強靭な枠の形をした構造です。

    室内の隅にある柱や梁といった枠が構造躯体であるため、室内に動かせない耐力壁がなく、自由な空間をつくりやすいのが特徴です。

    ただし、柱や梁があるところには室内に出っ張りが生じ、リフォームやリノベで動かすことはできません。

    長方形の住戸が多いのも特徴のひとつといえます。

    耐力壁で支える「壁式構造」

    もう一つの「壁式(かべしき)構造」は5階建て以下の低層の建物で採用される工法で団地などにもみられます。

    床・天井・四方の壁の合計6枚の壁が耐力壁となり空間を構成し、ラーメン構造よりも地震に強いと言われています。

    また、壁で支えるため、柱と梁がなく、室内に凹凸が出ないので空間がすっきりしているのがメリットです。

    一方、壁を取り払うことができないので、大空間をつくるといった間取り変更の自由度はラーメン構造より下がります。

    ラーメン構造と壁式構造の比較
    柱があればラーメン構造、全て壁だけでつくられていれば壁式構造

    何気なく眺めている間取図からでも、どちらの構造が採用されたマンションかを判断することができます。

    上図のように、間取図に柱があれば「ラーメン構造」です。

    ただし、間取図は簡易なケースもあるため、どちらの構造の物件なのかの詳細は仲介担当者に確認するとよいでしょう。

    1-2.ラーメン構造はリノベで大空間がつくりやすい

    柱や梁のあるラーメン構造は、住戸内に撤去できない壁がない分、壁式構造に比べてリフォームやリノベーションの際に間取り変更の自由度が高い点がメリットです。

    水まわりの移動やリビングなど大空間をつくりたいという要望を叶えやすく、リノベーション向きの構造といえます。

    ただし、構造躯体である柱や梁はリノベーションで動かせないため、気になる場合は柱や梁を活かすリノベーションを目指すことで解消することが可能です。

    2.柱と梁の位置に着目すれば、室内のスッキリ度がわかる

    従来工法とアウトフレーム工法
    工法により柱と梁の出っ張り方が異なるため、間取図を確認する際は柱の位置に注目を。室内の印象をイメージする手掛かりになる

    ラーメン構造には、大きく分けて「従来工法」と「アウトフレーム工法」の2種類があります。

    ラーメン構造の建物であれば柱や梁があるのは当然ですが、その位置に着目して間取図を見ることで、室内のスッキリ度を予想することができるようになります。

    2-1.室内の凹凸が多くなる「従来工法」

    築古のマンションの多くは「従来工法」で、住戸内に柱や梁が突出する工法です。

    間取図を見て、柱が室内側に出っ張っていれば、従来工法と判断できます。この場合、間取図上は判断しづらいですが、天井から窓の間にある梁も室内側に出っ張っています。

    そのため、間口や天井高によっては圧迫感を感じたり、家具を配置するときに出っ張りが邪魔と感じる場合もあります。

    日本の多くの物件は従来工法のため、この記事で紹介するアイデアを使って柱と梁を味方にしていきましょう。

    2-2.室内がスッキリする「アウトフレーム工法」

    アウトフレーム工法は、柱や梁をベランダや共用廊下など住戸の外側に出した工法です。

    間取図を見て、柱が室外に出ていればアウトフレーム工法です。

    室内に柱や梁の出っ張りが少ないため、室内がスッキリ見えたり、室内が整形になるため家具が配置しやすいというメリットがあります。

    その分、ベランダに出っ張りがあったり、ベランダの手すり側の壁が分厚くなったりするので、現地で室内から外の景色がどのように見えるかを確認するのがオススメです。

    広告上の「面積」には実は柱も含まれる

    建築物の床面積は、壁の厚みの中心線で測る「壁芯(かべしん)面積」で算定するのが一般的。不動産を買う際に広告などで目にする専有面積は、「壁芯面積」での表記となります(対して、登記面積には内法面積が使われます)。

    壁厚の中心で囲まれた範囲の面積を指すものなので、実際には空間ではない柱の出っ張り部分も専有面積に含まれることになります。

    そのため、ラーメン構造の場合、「室内に柱が多い=実際に使える面積は専有面積の表示より狭くなる」ということを留意しておきましょう。

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    3.構造の制約を味方にするリノベーションを目指そう

    ここまでは、間取図等で判断できる構造の違いや、柱や梁の特徴や見方についてお伝えしました。

    ですが、これは「こういう間取図に出合ったらその物件は買いです!」と特定の構造や間取りをオススメするものではありません。

    自分がしたい暮らしを叶えるリノベーションプランの妨げにならないか、自信をもって判断していただくための1つの材料だと思ってください。

    なぜなら間取りの制約はリノベプランなどで補える部分が多く、比較的自由度の高い条件だからです。

    予算や環境、立地など変え難い条件で気に入る物件があるのであれば、そちらを優先し、叶えたい暮らしをさまざまなプランの工夫で叶えてくれる発想豊かなリノベ会社を見つけて相談することが、希望の暮らしを叶える近道といえるでしょう。

    4.柱や梁を活かすリノベアイデア5選

    柱や梁の基礎知識が備わったら、それらを活かした空間づくりを検討したいもの。

    ここからは、リノベで誕生した、柱や梁を味方につけたアイデアを紹介します。

    case1:梁✕デザイン
    あえて目立たせ、デザインのアクセントに


    大きな梁なら、あえて目立たせて空間のフォーカルポイントにするのも手です。

    こちらの事例は、リビング天井の内側に存在感のある梁があった中古物件。

    白い壁に対し梁を躯体現しのコンクリート仕上げにして空間のデザインポイントに。

    照明をまとわせることで、邪魔になる梁を、表情とデザイン性のあるアクセントに変えています。


    梁はバランスよく照明を配置するよきガイドにもなる

    case2:梁✕収納
    梁の位置をガイドに収納を整える


    室内に出た梁に合わせて棚を配置すると、空間の凹凸を隠してすっきりとした印象にすることができます。

    事例はアウトフレーム工法で柱が屋外に出ている物件。既存の状態でもスッキリした空間ですが、キッチン奥の梁に合わせてオープン収納を設置することで、より整った印象の空間になっています。


    キッチン後ろの壁側の梁のちょっとした出っ張りに棚位置を合わている


    梁以外にも、柱と柱の間などのニッチな空間は、収納を上手く収めるチャンスとしてしたいところ。

    デッドスペースを有効活用してプランに落とし込めるのがリノベの強味ですね。


    小梁をよけながらギリギリまで空間を使った収納

    case3:梁✕ネコ
    出っ張りをガイドにキャットウォークを設置


    室内にある出っ張りは、高さをそろえるなど統一感を出すと空間が落ち着きます。

    この事例は、梁の高さをガイドにキャットウォークを設けた例。棚や吊り戸、照明の配置など、高いところに設けるものの高さのガイドとして梁を基準にするのは有効な手段です。


    凹凸の高さに統一感があると、いろいろなものをつけても空間の印象が雑然としにくい

    case4:柱✕土間
    柱の出っ張り分を自由度の高い「通路×土間」に

    間取図1柱の出っ張りを手掛かりに土間を配置


    こちらは窓側にある柱の出っ張りを逆手に取り、ベランダ側に通路を兼ねた土間を設けた事例。

    柱と梁が土間の効果で額縁のように浮かび上がり、窓辺を素敵な印象にしています。


    キッチンまで続く土間。柱をガイドにさまざまな使い方を想像させてくれるワクワクした空間に変身

    case5:柱✕ストリート
    中央の柱が辻をつくり多彩な表情をつくる要に

    間取図2柱の4面が住戸内に見える珍しい間取り


    家の中央に柱がある場合、敬遠したいと思う人もいるかもしれません。

    この事例は、柱を回遊動線の中央に据え、周りに箱型の空間を配置することで周りが幅の広い緩やかな通路となり、全体を緩やかにゾーニングしながらつないでいる間取り。

    緑のコーナーや絵画のある面など多彩な表情をつくるポイントにしている。設計担当に「この柱、いいですね!」と言わしめた、インスピレーションを呼ぶ柱となりました。

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    5.まとめ

    この記事では、マンションの柱や梁に関する基礎知識と、制約を味方につけるリノベーションアイデアを紹介しました。

    多くのマンションは、柱や梁があるのは当たり前のこと。

    少しの空間の圧迫感に目くじらを立てたり、制約のない間取りを探し続けてなかなか物件が見つからないと悩むのはもったいないと思います。

    自分たちはどのような暮らしがしたいかをしっかり掘り下げつつ、柱や梁、壁の制約を味方に変えるアイデアフルな会社を見つけ、一緒にプランを練ることに注力するのも賢い選択です。

    スムナラでは、建築士監修のもと、中古物件を買う前に知っておきたい注意点や、中古を買ってリノベする際のポイントやアイデアを紹介しています。リノベーションに構造や管理規約の制約はつきもの。制約を味方につけ、アイデアの幅を広げましょう。

    イラスト/長岡伸行  紹介事例/ゼロリノベ

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