更新:2022.07.04

抵当権抹消登記の委任状とは?その入手方法や書き方、注意点などを解説

抵当権 抹消 委任状

「抵当権の抹消をする際に、委任状が必要だと聞いたけれど、どんなもの?」

「銀行から委任状が送られてきたけれど、どうすればいいの?」

住宅ローンを完済して、抵当権抹消の登記申請をする際に、そのような疑問を持つ人も多いでしょう。

抵当権抹消の登記申請では、場合によって以下のように必要な委任状が異なります。

  • 自分で手続きする場合:「金融機関から不動産所有者へ」の委任状1通のみ
  • 司法書士に依頼する場合:「金融機関から司法書士へ」と「不動産所有者から司法書士へ」の委任状2通が必要

また、不動産の所有者が金融機関から委任状を受け取った際に、自分で記入しなければならない部分もあり、それを間違えると登記申請ができません。

そこでこの記事では、抵当権抹消登記に必要な委任状について、くわしく解説していきます。

まず最初に、以下のことを説明します。

  • 抵当権抹消の際の委任状とは
  • 抵当権抹消登記に必要な委任状の書き方

さらに、次のようなことについても知っておきたいところです。

  • 委任状にかかる費用
  • 抵当権抹消登記における委任状の注意点

最後まで読めば、抵当権抹消登記に必要な委任状について、知りたいことがわかるはずです。

この記事で、あなたが無事に抵当権抹消の手続きができるよう願っています。

[監修]宅地建物取引士

市野瀬 裕樹

中古マンション売買仲介を累計1200件以上監督。株式会社groove agentにおいて不動産売買の業務に3年従事。買い手をサポートしてきた経験を活かし、どうすれば高く売れるのか?を、買い手目線で不動産売却仲介のアドバイスを行う。

目次

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    1.抵当権抹消の際の委任状とは

    抵当権抹消

    住宅ローンを完済した際には、ローンを組んでいた金融機関(銀行など)の抵当権を外す手続き=抵当権抹消登記をする必要があります。

    その際には、数種類の書類を揃えて法務局に提出しますが、その必要書類のひとつが「委任状」です。

    この委任状について、まずはどんなものかを知っておきましょう。

    1-1.抵当権抹消には委任状が必要

    委任状は、抵当権抹消登記の手続きをするための必要書類のひとつです。

    そこでまず、委任状とは何かについて知っておきましょう。

    1-1-1.「委任状」とは?

    そもそも「委任状」とは、各種の手続きを本人にかわって代理人が行う際に、「たしかにこの代理人に依頼した」ということを証明するものです。

    これがあることで、代理人には本人のかわりに法律上の手続きを行なう権限が生じます。

    では、抵当権抹消登記の委任状は、誰が誰に手続きを依頼するものでしょうか?

    それは、「不動産の抵当権をもっていた金融機関が、不動産の所有者に対して」です。

    住宅ローンでは、金融機関が不動産の購入者に対して融資をし、そのかわりに不動産に抵当権を設定します。

    そして、ローンを完済すれば、抵当権を外すための手続きが必要になります。

    つまり、抵当権には「債権者=金融機関」と「債務者=不動産所有者」の二者がかかわっており、そのため本来は抵当権抹消の登記手続きも両者で行うべきものなのです。

    それを、所有者単独で行なってもらうために、金融機関から所有者に対して委任状を出すわけです。

    1-1-2.委任状は金融機関から送付される

    この金融機関からの委任状は、住宅ローンの完済から10日前後のうちに、他の必要書類とあわせて郵送されてきますので、なくさないように保管してください。

    ちなみに、抵当権抹消登記は、自分ですることもできますし、司法書士などに手続きを依頼することもできます。

    自分で手続きする場合は、委任状は「金融機関から不動産所有者へ」の1通のみで結構ですが、司法書士に依頼する場合は、「金融機関から司法書士へ」と「不動産所有者から司法書士へ」の2通が必要になります。多くの場合は司法書士に報酬の範囲内で依頼することができます。

    これについては、「1-3.司法書士に依頼する場合」でくわしく説明しますので、そちらを参照してください。

    1-2.自分で手続きする場合の委任状

    前述したように、抵当権抹消登記を自分で手続きする場合は、「金融機関(=債権者)から不動産所有者(=債務者)へ」の委任状1通が必要になります。

    これは、住宅ローン完済から10日前後経つと、他の必要書類とともに金融機関から郵送されてきます。

    (送付までの日数は、金融機関によって異なりますので確認してみてください。)

    委任状の書式は金融機関によってまちまちですが、以下の基本的な記載内容は同じです。

    • 代理人:金融機関が誰を代理人として委任するかを示す  →空欄になっている場合があるので、手続きをする本人=不動産所有者が自分の氏名を記入する
    • 委任日:金融機関が委任した日  →空欄になっている場合は、ローン完済日(=最後の引き落とし日)を記入する
    • 委任する内容:「抵当権抹消登記申請に関する件」などと記載されている
    • 委任者:金融機関の住所、名称、代表者名、印

    参考として、委任状の一例を挙げておきましょう。

    【委任状の一例】

    委任状の一例

    出典:法務局ホームページ「不動産登記の申請書様式について

    実際はもっとシンプルで、前述した最低限必要な事項のみが記載されたものも多いようです。

    いずれにしろ委任状が送付されてきたら、記載内容に間違いがないか、必要なことがすべて記載されているかを確認しましょう。

    もし、代理人名や日付、何を委任するかなどが空欄になっていたら、申請をする人が自分で記入してください。

    書き方については、あらためて「2.抵当権抹消登記に必要な委任状の書き方」で説明します。

    1-3.司法書士に依頼する場合の委任状

    次に、司法書士に手続を依頼する場合の委任状について説明します。

    前述したように、この場合の委任状は、以下の2通が必要です。

    1)金融機関から司法書士への委任状

    2)不動産所有者から司法書士への委任状

    1)は、金融機関から送付された委任状で、代理人の欄に依頼した司法書士の名前を記入すれば使えます。

    2)はこちらで作成しなければなりませんが、基本的には司法書士事務所で書式を用意しています。

    依頼した際にそれをもらって、依頼者の名前や日付などを記入すれば結構です。

    司法書士によっては、ホームページからダウンロードできるようにしている場合もありますので、それを利用してもいいでしょう。

    くわしい書き方は、「2.抵当権抹消登記に必要な委任状の書き方」で説明しますので、そちらを見ながら記入してください。

    1-4.配偶者に提出を依頼する場合は委任状は不要

    「書類の作成は自分(=不動産所有者)がするが、忙しいので、法務局に書類を提出するのは配偶者に頼みたい」という方もいるでしょう。

    その場合は、配偶者への委任状も必要でしょうか?

    答えは、「書類の提出だけなら委任状は不要」です。

    というのも、書類の提出をかわりにしてもらう行為は「委任」ではなく「代理」だからです。

    代理・代行に委任状は必要ありません。

    2.抵当権抹消登記に必要な委任状の書き方

    抵当権抹消登記

    では、実際に委任状をどのように書けばいいのでしょうか?

    前述したように、抵当権抹消登記に必要な委任状には2種類ありますので、それぞれ説明していきましょう。

    2-1.金融機関から送付される委任状

    まず、抵当権抹消登記の手続きすべてで必要になる、「金融機関からの委任状」です。

    以下の見本を見てください。

    【金融機関からの委任状・見本】

    金融機関からの委任状

    多くの場合、以下の欄が空欄になっていますので、申請する人が自分で記入します。

    ◎代理人:抵当権抹消登記の申請をする人の「住所」「氏名」を記入する欄です。

    • 自分で手続きする場合は、自分=不動産所有者の「住所」「氏名」を記入します。
    • 司法書士に依頼する場合は、委任状を空欄のまま司法書士に渡して記入してもらいます。

    ◎日付:抵当権解除日=ローン完済日=最後の引き落とし日を記入します。

    また、もし委任する内容として「抵当権抹消登記の申請に関する件」という記載がなければ、それも記載します。

    記入の際には、黒のインクまたは黒のボールペンで手書きしてください。

    鉛筆書きやカラーインク、PCを使って印字するなどはNGです。

    2-2.司法書士への委任状

    司法書士に手続きを依頼する場合は、委任状が2通必要です。

    1通は「2-1.金融機関から送付される委任状」で挙げたものを、白紙のまま司法書士に渡して記入してもらえば結構です。

    もう1通の「不動産所有者から司法書士へ、抵当権抹消登記の申請手続きを委任する委任状」は、別途作成します。

    これについては、特に書式は決まっていません。

    インターネット上にたくさんのテンプレートがあるので、それを利用することもできますが、司法書士事務所のほうで書式を用意していたり、司法書士事務所のホームページからダウンロードできるようにしているケースもありますので、それらを使うといいでしょう。

    ここでは一例を挙げておきます。

    司法書士への委任状

    記入のしかたは、司法書士に教えてもらえば間違いないでしょう。

    が、ここでも一応の書き方をお伝えしておきます。

    ◎委任する内容:「抵当権抹消登記の申請に関する件」と記入するか、該当する項目にチェックします。

    ◎日付:委任状を書いた日を記入します。

    ◎委任者:手続を委任する人=不動産所有者の氏名、住所、連絡先を記入します。

         共有名義の場合でも、代表して申請する1名のみを記入すれば結構です。

    ◎印:実印でなく認め印で大丈夫です。

       ただし、シャチハタはNGです。

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    3.委任状にかかる費用

    委任状にかかる費用

    次に気になるのは、「委任状の作成にはいくらかかるのか?」ということでしょう。

    結論からいえば、自分で手続きする場合であれば、委任状に費用はかかりません。

    金融機関から送付された委任状に自分で記入するだけで、印紙なども不要です。

    ただ、司法書士に依頼する場合はもちろん費用が発生します。

    委任状に記入してもらう料金ということではなく、抵当権抹消登記の申請手続き全体を代行してもらう費用として、おおむね1万5,000~2万円程度の報酬が必要になるでしょう。

    もちろん司法書士によって報酬額は異なります。

    何か所かに無料相談をしてみて、その印象と見積額で依頼先を決めるのもおすすめです。

    4.抵当権抹消登記における委任状の注意点

    抵当権抹消登記における委任状の注意点

    以上で、一般的な抵当権抹消の登記申請に必要な委任状について、知っておくべきことは解説しました。

    ここからは、委任状について迷いがちなこと、間違えがちなポイントについても指摘しておきたいと思います。

    以下のような場合には、特に注意して委任状を用意してください。

    4-1.委任状の再発行には時間がかかる

    もし金融機関から送付された委任状をなくしてしまった場合でも、金融機関に事情を説明すれば再発行してもらえます。

    が、再発行までには多少の時間がかかります。

    「明日法務局に書類を出したいので、すぐ再発行してほしい」といった急なお願いは通りませんので注意してください。

    具体的に何日くらいかかるかは、金融機関によって異なりますので、依頼する際に確認しましょう。

    いずれにしろ、住宅ローン完済後に金融機関から書類が送られたら、なるべく早く手続きすることが大切です。

    4-2.委任状の印鑑はシャチハタ以外

    委任状に押印が必要な場合は、認め印で十分です。

    実印を押す必要はありません。

    ただし、シャチハタは使えないので注意してください。

    というのも、シャチハタはインクが薄くなったり変色しやすく、長期間の保存に耐えません。

    そのため法的手続きでは、基本的にシャチハタは使用不可とされます。

    委任状も同様ですので、書類作成の際にはかならず認め印(または実印)を用意しましょう。

    4-3.登記内容が現在の住所や姓と異なる場合は変更登記が必要

    中には、不動産を購入したときとローンを完済したときでは住所や氏名が変わってしまった、という方もいるでしょう。

    その場合、委任状(やその他の抵当権抹消登記申請書類)に現在の住所を記載すると、「登記簿上の不動産所有者の住所・氏名」と「申請書類に記載された所有者の住所・氏名」が異なることになり、登記手続きができません。

    そのため、まず登記簿上の住所・氏名を変更する「登記名義人住所・氏名変更登記」をして、不動産所有者の住所・氏名を現在のものに変更する必要があります。

    実際の手続きでは、抵当権抹消登記の申請と一緒に、住所・氏名変更登記の申請書も提出すれば大丈夫です。

    「登記名義人住所・氏名変更登記申請書」の必要書類は以下です。

    <住所変更の場合>

    • 登記名義人住所・氏名変更登記申請書:法務局で入手するか、法務局ホームページからダウンロード
    • 住民票または戸籍の附票
    • 地番変更証明書 など

    <氏名変更の場合>

    • 登記名義人住所・氏名変更登記申請書:法務局で入手するか、法務局ホームページからダウンロード
    • 戸籍謄(抄)本
    • 住民票または戸籍の附票

    4-4.共有不動産で変更登記する場合、名義人全員の委任状が必要

    不動産を購入する際に、夫婦や親子などの共有名義にしている方も多いでしょう。

    その場合も、基本的には委任状は代表して申請する人ひとりの名前を記載すれば問題ありません。

    金融機関から送付された委任状の「代理人」欄も、司法書士に委任する際の「委任者」欄も、申請者の氏名・住所(+司法書士への委任状では連絡先)のみを記載します。

    ただ、共有名義の上に「4-3.登記内容が現在の住所や姓と異なる場合は変更登記が必要」というケースであれば、住所・氏名を変更する名義人全員分の委任状が必要になります。

    夫婦であれば2人分、兄弟3人の名義なら3人分の委任状を用意してください。

    4-5.委任状の代表者が変わると記載事項も変わる

    金融機関から委任状が送付されてから、不動産の所有者が抵当権抹消登記を申請するまでの間に、金融機関の代表者が退任するなどして変わってしまう場合もあります。

    そうなると、所有者の手元にある委任状の「委任者=金融機関の代表者」の名前が申請時とは異なってしまうため、そのままでは登記手続きができません。

    そこで、以下のいずれかの方法をとってください。

    <手元の委任状を使う>

    「抵当権抹消登記申請書」に以下のように記載する

    • 「義務者」欄に新しい代表者名を記載
    • 「添付情報」欄に「登記義務者の代表者〇〇〇〇の代表権限は消滅しているが、代表権限を有していた時期は平成〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日である」と記載
    • 場合によっては閉鎖登記簿を用意して添付

    <新たな委任状を依頼する>

    • 金融機関に連絡して、新たな代表者名で委任状を再発行してもらう

    4-6.書き方がわからない場合の相談窓口

    委任状の書き方がわからなかったり、記載内容に疑問がある場合はどうすればいいでしょうか?

    まず、「金融機関からの委任状」の場合は、金融機関に連絡して問い合わせましょう。

    「司法書士への委任状」については、依頼する司法書士事務所に聞けば、くわしく教えてくれるはずです。

    また、抵当権抹消登記自体について不明な点がある場合は、その不動産を管轄する法務局に問い合わせてください。

    各法務局では「登記手続き案内」という相談窓口を設けています。

    現在は、新型コロナウイルス感染症への対策で、電話相談のみを受け付けている法務局が多く、事前に予約をするとその日時に担当者から電話がかかってくるしくみです(2021/12/6現在)。

    ただ、「作成した書類をチェックしてほしい」というお願いには、現在は応じてもらえないようなので、可能な限り自分で作成した上で、わからない部分だけを質問するようにしましょう。

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    5.まとめ

    いかがでしたか?

    抵当権抹消登記の委任状について、よくわかったかと思います。

    では最後に、記事の要点をまとめましょう。

    ◎抵当権抹消登記に必要な委任状は、

    • 自分で手続きする場合:「金融機関から不動産所有者へ」の委任状1通のみ
    • 司法書士に依頼する場合:「金融機関から司法書士へ」と「不動産所有者から司法書士へ」の委任状2通が必要

    ◎抵当権抹消登記の委任状では、以下のことに注意

    • 委任状の再発行には時間がかかる
    • 委任状の印鑑はシャチハタ以外
    • 登記内容が現在の住所や姓と異なる場合は変更登記が必要
    • 共有不動産で変更登記する場合、名義人全員の委任状が必要
    • 委任状の代表者が変わると記載内容も変わる
    • 書き方がわからない場合は法務局で相談

    以上を踏まえて、あなたが無事に抵当権抹消の手続きができるよう願っています。

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