更新:2022.07.04

遺言執行者による不動産売却のメリット・デメリットとトラブルを防ぐ方法

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亡くなった家族の遺言書に「遺言執行者」が指名され、不動産を売却して相続することが指定されていた場合、不動産がどのように売却されるのか不安に感じてしまう人が多いのではないでしょうか?

特に、家族ではない人が遺言執行者に指名されていると、より強い不安を感じてしまいますよね。

この遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人で、この場合は不動産を売却するための全ての権限があります。

相続人よりも強い権限のある遺言執行者ですが、不動産売却においてはメリット・デメリットがあります。

メリット・デメリット

遺言執行者が不動産売却を行うデメリットを防ぐためには、不動産の価値を調べること、遺言執行者と良好な関係を築くことが大切です。

そこでこの記事では、以下の内容について解説しています。

  • 遺言執行者が行う不動産売却の基礎知識
  • 遺言執行者が行う不動産売却の手順
  • 遺言執行者が不動産売却を行うメリット・デメリット
  • 遺言執行者による不動産売却で損をしないポイント
  • 遺言執行者による不動産売却でよくあるトラブルと対処法

この他にも、不動産売却時に発生する譲渡所得税についても解説しているので、遺言執行者による不動産売却で失敗したくない・損をしたくないという人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

[監修]宅地建物取引士

市野瀬 裕樹

中古マンション売買仲介を累計1200件以上監督。株式会社groove agentにおいて不動産売買の業務に3年従事。買い手をサポートしてきた経験を活かし、どうすれば高く売れるのか?を、買い手目線で不動産売却仲介のアドバイスを行う。

目次

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    1.遺言執行者が行う不動産売却の基礎知識

    遺言執行者とはどのような人なのか、不動産を売却する場合には権限がどれくらいあるのかなど、わからないことばかりで不安を感じているのではないでしょうか?

    場合によっては、大切な故人の不動産を関係のない人がが売却することになるので、不安に感じてしまいますよね。

    遺言執行者が不動産売却を行うことへの「わからない」という不安を解消するためにも、まずは遺言執行者について詳しく説明していきます。

    1-1.そもそも遺言執行者とは

    遺言執行者とは、遺言の内容を確実に実現するために必要な手続きを行う人です。

    故人の不動産を売却して相続する場合は、不動産の売却手続きを行う人ということになります。

    なぜ遺言執行者が指名されるのかというと、遺言書の内容を「確実に実現する」というのが大きな目的としてあるからです。

    例えば相続において不動産売却をする場合、相続人だけでは、誰が不動産売却を行うのかや、売却価格への不満などでトラブルが起きやすいため、売却がスムーズに行われないケースがあります。

    その他にも、第三者への寄付という形で相続金を遺贈する場合、相続人の不満から不動産売却が行われないといったケースも考えられます。

    このように遺言書の内容が実現されないという結果にならないためにも、遺言執行者が指名されるのです。

    遺言執行者には誰でも指名することができるので、遺言者が亡くなった時点で未成年者・破産者でなければ相続人や知人でも遺言執行者になることができます。

    しかし、相続トラブルになる可能性があるため、利害関係のない専門家(弁護士や税理士・司法書士・信託銀行)から選ばれることが一般的です。

    1-2.遺言執行者が行う不動産売却は「清算型遺贈」

    清算型遺贈とは、故人の不動産を売却して現金化し、相続人やボランティア団体などの第三者に遺贈する方法で、多くの場合は遺言執行者が指名されます。

    清算型遺贈が行われるケースとしては、以下のようなものがあります。

    1つ目の例として、故人が自宅・土地・マンションの不動産を保有していたとします。

    これを相続人A・B・Cの3人に分配するときに、Aには自宅、Bには土地、Cにはマンションという分配では均等な相続にはなりません。

    このような不動産の分配は相続間でトラブルになりやすいため、遺言執行者が現金化して平等に分配します。

    2つ目の例として、不動産を相続人以外の第三者に寄付する場合です。

    不動産のままでは固定資産税がかかり寄付先の負担となってしまうので、遺言執行者が現金化して遺贈します。

    このように、不動産を相続人や第三者へトラブルなく相続・遺贈するために清算型遺贈という方法がとられ、多くの場合は遺言執行者が不動産売却を行います。

    1-3.遺言執行者の不動産売却における権限

    トラブルなく相続するために遺言執行者が選ばれていることがわかりましたが、不動産売却においてどれだけの権限があるのか気になりますよね。

    実は、遺言執行者には不動産売却における全ての権限があり、相続人よりも強い権限があります。

    遺言執行者の権限については、民法第1012条に「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と定められています。

    遺言執行者が専門家などの第三者である場合、遺言執行者よりも親族である相続人の方が権限がありそうですが、相続人が不動産の売却や売却価格の指示を行うことはできません。

    なぜ遺言執行者にこれほど強い権限があるかというと、先ほど説明したように「遺言の内容を確実に実現するため」です。

    相続人にも権限があると不動産売却がスムーズに行えず、遺言執行者を指名した意味がなくなってしまいます。

    そうならないためにも、遺言執行者に強い権限を与えて、故人の願いを叶えることが優先されているのです。

    しかし、遺言執行者が「不動産売却の手続きを進めてくれない」「一部の相続人に利益を渡していた」など、解任すべき正当な理由がある場合は、家庭裁判所で遺言執行者を解任する手続きを行う事ができます。

    ただし、「不動産の売却価格に納得がいかない」といった内容は正当な理由に当てはまりません。

    不動産を納得のいかない価格で売却されてしまわないように、遺言執行者との良好な関係を築きながら、不動産の相場価格を把握して自分から遺言執行者に働きかけることが大切です。

    詳しい内容については「5.遺言執行者による不動産売却で損をしないポイント」でまとめていますのでチェックするようにしてください。

    1-4.不動産売却を行う遺言執行者には報酬の支払いが必要

    相続人が遺言執行者の指名を希望していなかったとしても、遺言書で指名されている場合は、相続人全員で遺言執行者に報酬を支払う必要があります。

    相続金を全て第三者に遺贈する場合も、相続人が相続財産等から遺言執行者の報酬を支払うことになるので注意してください。

    遺言書に報酬額が書かれていれば遺言書通りの金額ですが、記載されていない場合は遺言執行者が一般人か専門家かによって金額が異なります。

    まず、遺言執行者が一般人の場合は報酬額は20万〜30万円が相場となっています。

    遺言執行者が故人の友人だったため「報酬はいらない」というケースもありますが、不動産売却には書類発行などに費用がかかっているので、最低限実費とお礼の品などを渡すことをおすすめします。

    次に、遺言執行者が弁護士や税理士・司法書士・信託銀行など、専門家だった場合の相場額は以下の通りです。

    専門家だった場合の相場額

    報酬額は、「遺産の◯%+一定額」など、事務所によって設定がまちまちなので、上記の表の金額はあくまでも参考程度にしてください。

    1-5.遺言執行者は不動産売却の専門家ではないので注意

    遺言執行者に弁護士などの専門家が選ばれていると、プロだからと安心して任せきりになってしまいがちです。

    しかし、弁護士などの専門家は円滑に手続きを行うプロであって、不動産の価値を判断するプロではありません。

    あくまでも、スムーズに不動産を売却して相続人や第三者へ遺贈することが目的なので、できるだけ高く不動産を売却することを目的としていません。

    不動産を安く売却されてしまった後では、取り戻して仕切り直すことはできないので、遺言執行者に任せきりにしていると損をする可能性があります。

    そうならないためにも、相続人は故人の不動産の適正な売却価格を知っておくことがとても大切です。

    適正価格を把握しても相続人が不動産を売却することはできませんが、不動産業者による査定書や不動産鑑定士による鑑定書を遺言執行者に提示して、相続人の意思を伝えることはできます。

    最終的な決定は遺言執行者の判断となりますが、「これくらいの価値がある不動産」であることを伝えるという意味で有効です。

    2.遺言執行者が行う不動産売却の手順

    遺言執行者についてわかったところで、次にどのように不動産売却が行われるのかが気になりますよね?

    不動産の売却手順がわからないと、遺言執行者がどこまで実行しているのかがわからず不安だと思うので、以下の手順について詳しく解説していきます。

    遺言執行者が行う不動産売却の手順

    遺言執行者による不動産売却の流れを把握して、「手続きが開始されていなかった」「すでに売却済みだった」というトラブルを回避しましょう。

    2-1.「就任通知書」と「遺言書の写し」を相続人に送付する

    遺言執行者には、就任した際に遺言の内容を相続人に通知する義務があります。そのため、遺言執行者になると、「就任通知書」と「遺言書の写し」を相続人全員に送付します。

    この時に、どのような流れで遺言を実行するのかということが説明されるので、この時点で不動産の査定書などを渡しておくといいでしょう。

    もし、遺言執行者から「就任通知書」と「遺言書の写し」が届かない場合は、任務を怠ったとして家庭裁判所で解任の手続きを行うことができます。

    ただし、民法にははっきりとした期間が記されていないので、まずは遺言執行者に確認をとり、それでも解決しない場合は家庭裁判所で「遺言執行者解任の審判」を行ってください。

    2-2.「相続財産目録」を相続人に交付する

    「相続財産目録」とは、故人の財産を調査したものをまとめた書類です。

    相続されるお金に直接影響がある内容なので、遺言執行者が故人の知人や相続人だった場合、相続財産の目録に漏れや不正がないか心配ですよね。

    そんな時は、同席したいことを遺言執行者に伝えると、目録作成に相続人も立ち会えるので安心できるかと思います。

    また、相続人ではない故人の兄弟姉妹にも財産目録を交付してもらえるので、漏れや不正がないかを確認してもらうのもいいでしょう。

    2-3.「所有権移転登記」を行う

    「所有権移転登記」とは、不動産の所有者を故人から相続人に変える手続きです。

    名義変更をしていないと不動産が売却できないので重要な手続きとなります。

    この手続きでは、相続人全員の名義に変更します。遺言執行者がいないと、相続人全員でさまざまな書類を準備する必要があるので、「書類が集まらない」「連絡が取れない」といったトラブルが起こりやすいポイントです。

    その点、遺言執行者がいると単独で所有権移転登記を行えるので、相続人が多い場合や他県に住んでいる場合に大きなメリットとなります。

    2-4.不動産を売却する

    相続人に対する通知や不動産を売るための手続きが完了したら、遺言執行者が不動産を売却します。

    注意したいのが、売却が完了してしまうと、不動産の売却価格に不満があってもどうすることもできないということです。

    遺言執行者には定期的な報告義務がないので、不動産が売却される前に相続人側から確認の連絡を入れることをおすすめします。

    もちろん相続人に不動産売却の助言を行うことはできませんが、遺言執行者と良い関係が築けている場合は、どうにかしようと少しでも高い値段で売却してくれる可能性が期待できます。

    2-5.不動産売却金を分配する

    不動産が売却された後は、売却にかかった費用や遺言執行者への報酬を引いた金額が相続人あるいは第三者に分配されます。

    相続する不動産を売却する際には、譲渡所得税という税金が発生するので要注意です。

    たとえ不動産売却金が第三者に遺贈されるとしても、譲渡所得税は相続人全員で支払うことになります

    譲渡所得税は確定申告によって決定するので、譲渡所得税額を計算して売却金から差し引いておくことが大切です。

    詳しくは「6.遺言執行者による不動産売却後は譲渡所得税が発生する」の内容をチェックしてください。

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    3.遺言執行者が不動産売却を行うメリット

    遺言執行者がどのように不動産売却を行うのかがわかりましたが、遺言執行者に不動産売却を任せるメリットが気になりますよね。

    相続人同士の方がスムーズに不動産売却を行えそうな気がしますが、実は遺言執行者がいる方が良い場合もあるんです。

    ここでは遺言執行者がいるからこそのメリットを2つ紹介します。

    • 不動産売却の面倒な手続きがスムーズに完了する
    • 相続人同士の争いを避けられる

    遺言執行者に不動産売却を任せるメリットの内容について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

    3-1.不動産売却の面倒な手続きがスムーズに完了する

    先ほど不動産売却の流れの説明で、不動産売却には面倒な手続きが多く、遺言執行者がいないと手続きがスムーズにできないケースがあることに触れました。

    特に、不動産を売却するために必要な所有権移転登記では、相続人全員の書類が必要なので、この時点で手続きがストップしてしまう可能性が高くなります。

    • 相続人の人数が多い
    • 相続人が他県に住んでいる

    といった場合は、遺言執行者が代表として不動産売却に関わる手続きを行う方が、スムーズに相続を完了する事ができます。

    3-2.相続人同士の争いを避けられる

    遺言執行者がいることで、相続人には不動産売却における権限がなくなるので、相続人同士の争いを回避することに繋がります。

    「遺言執行者がいなくても我が家にトラブルは起こらない」と感じている人もいるかと思いますが、実は一般家庭の相続金額でのトラブルも多いのです。

    最高裁判所の調査による令和2年の相続トラブルの割合は、遺産額が1,000万円以下の場合が34.7%、1,000万円超5,000万円以下が42.9%となっています。

    相続人同士の争いを避けられる

    遺産相続を平和的に解決するために遺言執行者による不動産売却は大きなメリットと言えます。

    4.遺言執行者が不動産売却を行うデメリット

    遺言執行者が不動産売却を行うメリットだけでなく、デメリットを把握しておくことで注意すべき点が見えてきます。

    遺言執行者が不動産売却を行うデメリットは2つあります。

    • 不動産の売却価格が安くなりがち
    • 遺言執行者に相場よりも高い報酬を求められることがある

    トラブルにならないように、それぞれのデメリットについて把握しておきましょう。

    4-1.不動産の売却価格が安くなりがち

    遺産を相続する側としては、できるだけ高く不動産を売却して遺産を分配してほしいという思いがありますよね。

    しかし、遺言執行者は相続人ではないことが多いので、「不動産を高く売る」ことよりも、「できるだけ早く売却して円滑に相続人あるいは第三者へ遺贈する」ことを目的としています

    実際に、評価額2億円程度の不動産を4,200万円で売却されたケースもあるので、取り返しのつかない事態になる可能性もあります。

    売却されてしまった不動産の売買契約を取り消すことはできないので、できるだけ高く売却して欲しいと考えている相続人にとって、最大のデメリットと言えます。

    4-2.遺言執行者に相場よりも高い報酬を求められることがある

    遺言執行者へ報酬が発生することはお伝えしましたが、相場よりも高い報酬を請求されるケースがあります。

    特に、遺言書に報酬額について書かれていないと、遺言執行者と報酬額を決める時にトラブルになることがあります。

    遺言執行者が一般人の場合と専門家の場合では報酬額が異なるので、改めてまとめた以下の表で相場をチェックしておきましょう。

    遺言執行者に相場よりも高い報酬を求められることがある

    上記の報酬額はあくまでも参考価格ですが、遺言執行者の報酬額に規定はないので、相場よりもはるかに高い金額を請求されることがあります。

    不動産売却のめんどうな手続きを任せられるメリットはありますが、報酬が高すぎて相続されるお金が減ってしまうのは困りものです。

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    5.遺言執行者による不動産売却で損をしないポイント

    故人の不動産を「少しでも高く売却してほしい」と願う相続人にとって、遺言執行者による不動産売却は、相場価格より安く売却される可能性があることが最大のデメリットであることがわかりました。

    相続人が直に不動産売却に関わることはできませんが、やはり損はしたくないですよね。

    そこで、相続人ができる遺言執行者による不動産売却で損をしないためのポイントを4つ紹介していきます。

    • 不動産の適正価格を調べる
    • 遺言執行者に不動産一括査定サービスの利用を促す
    • 遺言執行者への報酬額は家庭裁判所で決めてもらう
    • 遺言執行者と良好な関係を築く

    これらのポイントでなぜ遺言執行者による不動産売却で損をしなくなるのか、それぞれの理由を説明していきます。

    5-1.不動産の適正価格を調べる

    遺言執行者が指名されていると、相続人は不動産の売却に関わることができないと説明してきました。

    しかし、不動産を業者に査定してもらうことで適正価格を把握したり、査定してもらった時の査定書を遺言執行者に渡すことはできます。

    つまり、売却業者を決めるのは遺言執行者ですが、「この不動産はこれだけの価値がある」ということを遺言執行者に伝えることはできるのです。

    ここでは、土地と建物の両方の価格を調べることができる、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」とその使い方について解説していきます。

    5-1-1.土地総合情報システム

    土地総合情報システム

    出典:国土交通省「土地総合情報システム」

    国土交通省が運営する「土地総合情報システム」は、実際に不動産取引を行った人へのアンケート結果をもとに、取引価格情報をデータベース化したサイトです。

    遺言執行者に不動産の価値を知らせるためにも、必ず相場価格を調べておきましょう。

    それでは、土地総合情報システムでの検索方法を解説していきます。

    ①国土交通省の「土地総合情報システム」にアクセスする

    まずは、こちらの国土交通省「土地総合情報システム」をクリックして、サイトにアクセスしてください。

    ②不動産取引価格情報検索から調べる

    土地総合情報システムにアクセスすると以下の画面が表示されます。

    不動産取引価格情報検索から調べる

    出典:国土交通省「土地総合情報システム」

    不動産の相場を知るためには、赤枠で囲った「不動産取引価格情報検索」を選択します。

    ③不動産の条件を入力して検索する

    「不動産取引価格情報検索」を選択すると、不動産の情報を入力する以下の画面が表示されます。

    不動産取引価格情報検索

    出典:国土交通省「土地総合情報システム」

    画面左側の上から順に調べたい情報を入力していきます。

    周辺の地域で取引されている価格

    上記の情報を入力したら「この条件で検索」を選択すると、周辺の地域で取引されている価格の詳細を確認することができます。

    あくまでも周辺地域での取引価格なので、自身の不動産の明確な価格を判断することはできません。

    しかし、周辺地域の実際の取引価格は参考になるので、結果を印刷して遺言執行者に渡しておくのもいいでしょう。

    5-2.遺言執行者に不動産一括査定サービスの利用を促す

    不動産一括査定サービスとは、複数の不動産会社の査定を一括で行えるサイトで、不動産会社で1社ずつ調べるという手間を省くことができるサービスです。

    遺言執行者に不動産一括査定サービスの利用を促す

    複数の不動産会社の査定価格を確認できるだけでなく、サイト内から良い不動産会社を選ぶこともできるので、遺言執行者が利用することで、相場よりもはるかに安く売却されるというリスクを減らすことができます。

    相続人は「◯◯不動産会社に売却を依頼して欲しい」ということは言えませんが、「不動産一括査定サービスを利用して良い不動産会社を選んで欲しい」という願望を伝えることはできるので、遺言執行者にサービスの利用を促してみてはいかがでしょうか。

    5-3.遺言執行者への報酬額は家庭裁判所で決めてもらう

    遺言執行者が一般の人だった場合、20万〜30万円が報酬の相場額ということをお伝えしました。

    この金額は、遺言の内容を実行する前に、遺言執行者と相続人全員で話し合って決めます。

    しかし、中には話し合いで報酬額に折り合いがつかないこともあります。その場合は、家庭裁判所で報酬額を決めてもらうこともできます。

    遺言執行者が一般人の場合は故人の友人だったりと、お金の話をしにくいこともあると思うので、初めから家庭裁判所で決めてもらうのもおすすめです。

    次に、遺言執行者が専門家だった場合、報酬額が高額で遺産と見合っていないことがあります。

    その場合は、遺言執行者を辞退してもらうか、家庭裁判所で遺言執行者を解任する申し立てを行うことができます。

    解任後は、支払える報酬額の執行者を改めて選ぶか、相続人全員で手続きを行うかを選ぶことになるので、解任前に相続人同士で決めておきましょう。

    「故人が決めたことだから…」と高すぎる報酬を支払うのではなく、家庭裁判所などを通して遺産や手続きに見合った報酬額を決めてもらいましょう。

    5-4.遺言執行者と良好な関係を築く

    不動産売却で損をしない最大のポイントは、遺言執行者といつでも話し合える良好な関係を築くことです。

    相続人がいくら不動産の適正価格を調べても、遺言執行者との関係が悪いと参考資料を受け取ってもらえない、意思を反映してもらえないという事になりかねません。

    遺言執行者と相続人と言っても、結局は人と人とのやり取りなので、良い関係の相手の思いを無下にはできないですよね。

    いつでも遺言執行者と話し合える環境があれば、不動産売却への不安な気持ちも解消できるので、安心して任せるためにも良好な関係を築いていきましょう。

    6.遺言執行者による不動産売却後は譲渡所得税が発生する

    遺言執行者による不動産売却だけでなく、相続や第三者に遺贈するために不動産を売却する時には、譲渡所得税という税金が発生します。

    譲渡所得税は相続人全員で支払うのですが、譲渡所得税額は確定申告によって決定するので、売却時と納税時のタイムラグが生じてしまうのが注意ポイントです。

    譲渡所得税分の費用を不動産売却金から差し引いておかないと、自腹で譲渡所得税を支払うことになってしまいます。

    そうならないためにも、不動産を売却した時点で譲渡所得税額を計算し、売却金から税金分を確保しておくことが重要です。

    譲渡所得税額の計算式は以下の通りです。

    譲渡所得税額の計算式

    計算式の中の「課税譲渡所得」には、不動産の売却価格から売るための手続きにかかった費用を差し引いた金額を入れてください。

    売るための手続きにかかった費用には、以下の内容が該当します。

    • 仲介手数料
    • 測量費
    • 売買契約書の印紙代
    • 売却するときに借家人などに支払った立退料
    • 建物を取り壊して土地を売るときの取り壊し費用 など

    また、課税譲渡所得にかける「税率」は、譲渡される不動産の所有期間によって異なるので、以下の「譲渡所得税の税率表」を参考にしてください。

    <譲渡所得税の税率表>

    譲渡所得税の税率表

    例えば、故人が5年超所有していた不動産を売却して相続するケースで、課税譲渡所得が1,500万円だった場合は以下のように計算式に当てはめることができます。

    1,500万円(課税譲渡所得)×20.315%(税率)=304万7,250円(譲渡所得税額)

    例の譲渡所得税額は304万7,250円となるので、不動産の売却金から税金分も差し引いて分配してもらいましょう。

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    7.遺言執行者による不動産売却でよくあるトラブルと対処法

    遺言執行者による不動産売却でトラブルにはなりたくないというのが当然の思いではないでしょうか?

    しかし、トラブルになりたくなくても起きてしまうことはあるので、よくあるトラブルと対処法を覚えておくと安心です。

    遺言執行者が行う不動産売却でよくあるトラブルには、相場価格よりも安く売却されてしまったということがあります。

    実際に裁判も行われているので、平成28年に行われた賠償請求裁判について紹介していきます。

    この裁判は、相続人が遺言執行者に対して行った賠償請求で、評価額2億1,367万円程度の相続人の不動産が、遺言執行者により4,200万円で売却されたという内容です。

    評価額と売却価格にものすごい差がありますが、相続人の訴えは棄却され、遺言執行者が売却した価格が不当とは言えないという判決でした。

    なぜ、このような判決になったのかというと、相続人側の不動産鑑定士が査定した評価額が正しいということを立証するのが難しいからです。

    さらに、遺言執行者による売却価格が不当であるという証拠も立証できないので、相続人は泣き寝入りする結果となってしまいました。

    人それぞれの感覚である「高い」「安い」の立証は難しいということから、不動産売却後の損害賠償請求は難しい傾向にあります。

    このようなトラブルを防ぐためには、先ほど説明したように遺言執行者と良好な関係を築きながら、相続人側の思いを伝える事が大切です。

    8.まとめ

    遺言執行者による不動産売却について、重要なポイントをもう一度おさえておきましょう。

    • 遺言執行者とは…
    1. 遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人
    2. 不動産売却における全ての行為に対して権限がある
    3. 報酬の支払いが必要
    4. 不動産売却の専門家ではない
    • 遺言執行者が不動産売却を行うメリット
    • 不動産売却の面倒な手続きがスムーズに完了する
    • 相続人同士の争いを避けられる
    • 遺言執行者が不動産売却を行うデメリット
    • 不動産の売却価格が安くなりがち
    • 遺言執行者に相場よりも高い報酬を求められることがある
    • 遺言執行者による不動産売却で損をしないポイント
    • 不動産の適正価格を調べる
    • 遺言執行者に不動産一括査定サービスの利用を促す
    • 遺言執行者への報酬額は家庭裁判所で決めてもらう
    • 遺言執行者と良好な関係を築く
    • 不動産売却後は譲渡所得税が発生する
    • 遺言執行者による不当な低価格での売却は損害賠償請求が難しい

    この記事をもとに、遺言執行者による不動産売却への不安や問題を解消できれば幸いです。

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