更新:2023.12.18

契約不適合責任の免責とは?瑕疵担保責任との違いや特約、買主・売主の注意点を徹底解説

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「不動産を売りたいけれど、契約不適合責任はどこまで免責にすべき?」

「不動産を買いたいけれど、免責となっている物件は危険なの?」

そんな疑問をもっている売主・買主の方も多いと思います。

「契約不適合責任を免責にする」とは、契約したあとにどんな欠陥が見つかっても、売主は保証責任を負わない契約とするということです。

売主にとっては有利な契約ですが、買主は契約後に欠陥が見つかっても売主を訴えられないという不利な契約となります。

売主・買主、双方が納得する売買を行うには、契約不適合責任の免責をバランスよく設定していくことが非常に大切です。

そこでこの記事では、契約不適合責任の免責内容の決め方や買主・売主、双方の注意点などをご紹介していきます。

本記事を最後まで読めば、売主・買主ともに損をしない売買契約ができるようになります。

ぜひ本記事を参考に、売買契約にむけて免責のポイントや注意すべき点を確認しておきましょう。

[監修]宅地建物取引士

市野瀬 裕樹

中古マンション売買仲介を累計1200件以上監督。株式会社groove agentにおいて不動産売買の業務に3年従事。買い手をサポートしてきた経験を活かし、どうすれば高く売れるのか?を、買い手目線で不動産売却仲介のアドバイスを行う。

目次

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    1.契約不適合責任とは?

    契約不適合責任とは、売買契約において売主が負う保証責任のことです。

    契約を締結した当事者が、契約に定められた内容に適合しない行為を行った場合に生じる法的責任のことを指します。具体的には、商品やサービスの提供が契約条件に合致していない場合や、納期や品質などの契約条件に違反した場合など、契約を締結した相手方が損害を被った際に、契約不適合責任が発生します。

    契約不適合責任は、契約書に明示的に定められている場合もあれば、法律や判例に基づいて発生する場合もあるということを覚えておきましょう。

    2.契約不適合責任免責と瑕疵担保責任の違いとは?

    契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは以下の表の通りです。

    契約不適合責任 瑕疵担保責任
    契約内容に合致しない場合に発生 一定の品質基準を満たさない場合に発生
    契約書に明示的に免責事項が記載されている場合に限る 免責事項がない限り責任を負う
    一般的に一定の期間内に主張する必要がある 一般的には長期にわたって主張できる
    売主や提供者が責任を負う 商品やサービスの供給者が責任を負う

    また、令和2年4月の民法改正で、「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」から名称が改められ、「契約不適合責任」となりました。名称の変更と同時に内容も見直され、買主は売買をしやすくなったと同時に、売主の責任が重くなっています。

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    3.契約不適合責任の免責とは

    契約不適合責任を「免責」にするとは、売買後の保証責任を免除する、ということです。

    契約不適合責任においても免責の特約を付けることで、売主は損害賠償等の責任を逃れられます

    ただし、免責とするためには「契約不適合責任免責とはどのようなものか」を理解したうえで、改正民法のルールに沿って特約を記載する必要があるため注意が必要です。

    そこで本章では、契約不適合責任における「免責」の基礎知識として、以下の3つのポイントをご紹介します。

    • 契約不適合責任免責の契約は買主にデメリットがある
    • 免責の特約は双方の同意があれば有効になる
    • 免責をつけられる条件は売主によって異なる

    契約不適合責任免責のルールをしっかり把握し、売買契約で損をしないように理解を深めていきましょう。

    3-1. 契約不適合責任免責の契約は買主にデメリットがある

    契約不適合責任における「免責」は、買主にデメリットがある契約だといえます。反対にいえば、免責事項を増やせば売主の保証リスクを減らせます。

    売買契約において、売主は一定期間、保証責任を負わなければなりません。そうした売主側の責任を民法では「契約不適合責任」といいますが、免責の特約をつけることで免責とした事項については契約不適合責任(保証責任)を免除できます

    売主にとっては売買後の保証責任から逃れられるため、免責事項を増やすごとにメリットは大きくなります。

    一方、免責事項が多い物件ほど、買主にとっては購入後のリスクが大きくなる可能性が高いです。例えば、水漏れ、シロアリ、家の傾きなど、どんな欠陥が見つかったとしても、契約上免責となっていれば保証や損害賠償を求めることはできません。

    3-2. 免責の特約は双方の同意があれば有効になる

    免責の特約は、売主・買主、双方が契約に同意した時点で有効になります。

    買主からすると「この免責内容だとあまりに不利だから、無効になるんじゃないの?」というような内容でも、契約に同意していれば基本的には有効となります。そのため、契約書に記載のある免責事項については、基本的に保証してもらえません。

    免責の契約が基本的に有効である理由は、契約不適合責任が「任意規定」であるためです。

    任意規定とは、法律において一定の定めはあるものの、それと異なる合意や定めをした場合、その合意や定めが優先されるという法律の規定のこと。

    つまり、売主・買主、双方の同意があれば、責任を免除する契約(免責特約)も有効となります。

    一度契約してしまうと、基本的に免責事項を無効にできません。売主は、契約書に免責事項として書かれている内容が適切かどうかを判断し、契約に同意する必要があるといえます。

    3-3. 免責をつけられる条件は売主によって異なる

    免責には条件があり、「いつから免責とできるか」や「どこまで免責とできるか」は、売主が以下の3つのいずれに該当するかによって異なります。

    • 個人
    • 宅建業者
    • その他の法人

    これは、宅建業者や法人の場合は、民法以外にも適用しなければならない法律が定められているためです。

    具体的には、宅建業者の場合は「宅建業法」、法人の場合は「消費者契約法」に沿って、個人が不利にならない契約内容としなければなりません。

    それぞれの免責条件について、以下にご紹介します。

    3-3-1. 売主が【個人】の場合

    売主が「個人」の場合、基本的に免責の条件はありません。

    個人間の売買では適用される法律は民法のみとなるため、任意で免責特約を決められるからです。

    例えば、売主が個人であれば、「引き渡し直後から免責とする契約」や、「売買後の責任を一部に限定する契約」を設定することもできます。仲介として不動産会社を挟む場合も同様です。

    そのため買主は、購入した物件の売主が個人であった場合、免責特約がどんな内容であろうとも、基本的には免責が有効となることを覚えておきましょう。

    一度交わした契約は7. 契約不適合責任免責が無効になる4つのケースで紹介するケースを除き、無効にすることはできません。

    3-3-2. 売主が【宅建業者】の場合

    売主が「宅建業者」で買主が個人の場合、宅建業法により売却後2年を超える時期までは免責とすることができません(宅建業法第40条)。

    つまり、買主が中古物件などを宅建業者から直接購入した場合は、2年間は保証してもらえるということです。

    売主が宅建業者の場合、「通知期間(保証期間)を2年間とする」という契約が有効になります。これは、引き渡し後2年以内に「欠陥がありました」と通知を受けたものだけ保証するという契約です。

    買主は、宅建業者から購入した物件については2年間保証してもらえると覚えておきましょう。

    3-3-3. 売主が【宅建業者以外の事業者(法人)】の場合

    売主が「宅建業者以外の事業者(法人)」の場合、消費者契約法が適用され、基本的に、引き渡し直後からの免責はできないこととなっています。

    引き渡し直後からの免責や、明らかに通知期間が短い契約では、個人の買主にとって不利な契約とみなされ、消費者契約法第8条、10条によって無効となります。

    「引き渡し直後からいつまで免責にできないのか」が気になる方もいるかもしれませんが、明確な決まりはありません。実際には契約書に「引き渡し後1年まで免責できない」などと記載されていて、これに従うのが一般的です。

    また「明らかに通知期間が短い契約」についても、具体的な期間が設定されているわけではありません。例としては、免責期間を3か月に設定した契約が無効になったという事例があります(法改正前の判例より)。

    免責期間に関する特約の一般例として、全宅連作成の契約書式(消費者契約用)をみてみると、通知期間は「引き渡し後1年」に設定されています。これは、個人と宅建業者とのバランスを考慮した設定となっているようです。

    すなわち、事業者(法人)から物件を購入した場合は、保証期間は1年程度と考えておくといいでしょう。

    4.中古物件を契約不適合責任免責にする理由

    中古物件の売買において、多くの売主が契約不適合責任を「免責」とする理由は、買主に対し中古リスクの許容を求めるためといえます。

    中古物件は築年数が古いほど、経年劣化により欠陥が生じる可能性が高くなります。そうした欠陥に対しいちいち補修等を請求されては、売主側もたまりません。

    特に、個人の売主の場合は保証する財力がないために、免責とするケースが多いです。

    つまり、買主に「中古だから欠陥がでる可能性が高いけれど、保証はできませんよ」という意味で、特約に免責事項を多く記載しています。

    免責事項が多い物件は、買主にとってはリスクがある買い物といえますが、他方では売買価格が比較的安く設定されているメリットもあります。「安く買える分、家の傾きや雨漏りなどの欠陥が見つかっても後々の保証はないですよ」ということです。

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    5.一般的な免責特約の内容

    中古物件の検討者のなかには、免責の契約内容に対して「この免責内容は一般的なの?」と疑問を感じる方も多いと思います。

    そうした場合、一般的な免責内容を把握しておくことで、免責内容が適切かを理解しやすくなります。

    個人が中古物件を売る場合(仲介の不動産会社を通す場合)、免責事項としては次のような条件にすることが一般的です。

    • 通知期間を3か月~1年程度に設定している
    • 保証の範囲を「修補の請求」のみとしている(代金の減額や契約解除は不可)
    • 設備についてを免責としている

    それぞれについて下記にご説明します。

    5-1. 通知期間を3か月~1年程度に設定している

    通知期間とは、買主が売主に対して欠陥を通知できる期間のことです。契約不適合責任では、欠陥を見つけた場合、買主は売主に対して1年以内に「通知」すれば、時効となる5年後までは賠償等の請求権を得られるとされています(改正民法第566条)。

    しかし、売買契約書に「通知期間」が設定されている場合、通知期間を過ぎて通知した欠陥については、保証してもらえなくなります

    5-2. 保証の範囲を「修補の請求」のみとしている(代金の減額や契約解除は不可)

    また、契約不適合責任における買主の権利には、「追完請求(修補の請求)」「代金の減額請求」「契約解除の請求」「損害賠償の請求」といったものがありますが、免責事項として保証範囲を修繕費等に限った契約も多いです。

    5-3. 設備についてを免責としている

    戸建てやマンションなど、中古物件においては経年劣化しやすい配管等の「設備」についてを免責としている特約も多くみられます。その場合、水漏れなどのトラブルが起こっても修理費等は保証してもらえません。

    まれに通知期間も設定せず、引き渡し直後からすべての事項を免責としているケースもありますが、その場合は「欠陥が多い」「売主側に財産がなく保証ができない(借金返済のために売却している)」など、なんらかの事情があることが予想されます。

    そういった物件は販売価格も安いことが多いですが、購入後の保証がゼロとなるため、リスクを容認したうえで慎重に契約したほうがいいでしょう。

    6.契約不適合責任で買主が請求できる5つの権利

    契約不適合責任で買主が請求できる権利は以下の5つです。

    • 追完請求
    • 代金減額請求
    • 催告解除
    • 無催告解除
    • 損害賠償

    順に解説します。

    6-1.追完請求

    追完請求とは、種類や品質が契約内容と異なる場合に契約に適合するように請求できる権利のことです。

    不動産において数量の概念はないため、不動産における追完請求とは主に修補請求のことをいいます。

    契約不適合責任が発生するか、しないかは「契約書に書かれていたかどうか」が重要です。そのため、契約書に書いてあったが、事実と異なる場合に請求を行うのが追完請求です。

    6-2.代金減額請求

    代金減額請求とは、追完請求に売主が納得する場合に売買価格を減額請求をする権利のことです。

    一般的には追完請求に売主が納得しなかった場合に行う請求のことですが、そもそも追完請求ができない場合や売主が追完に同意しない意思を明確に表した場合は、最初から代金減額請求できます。

    そのため、代金減額請求とは追完請求をしても売主が同意しない場合やそもそも請求が不可能な場合に請求できる権利のことです。

    6-3.催告解除

    催告解除とは、追完請求に売主が応じない場合に契約解除をすることをいいます。売主が追完請求に応じない場合、買主は代金減額請求に納得できないケースが一般的です。

    不動産の場合は代金が減額しても、そもそも住めない、住むために補修が必要といった欠陥があるケースが多いためです。

    催告解除は、そういった場合に購入をやめることを売主に伝えることをいいます。

    6-4.無催告解除

    催告解除が追完請求に売主が応じない場合に契約解除をすることだと説明しました。

    一方、無催告解除とはそもそも売主側が契約に応じることが不可能であると考えられる場合にできる契約解除のことを指します

    適用できる場合は、改正民法542条で以下の5つが認められています。

    • 債務の全部の履行が不能であるとき
    • 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
    • 債務の一部の履行が不能である場合または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき
    • 定期行為の時期を経過したとき
    • 催告をしても契約の目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかなとき

    催告解除とは異なるため、自分がどちらのケースにあたるのかしっかり確認しましょう。

    6-5.損害賠償

    損害賠償とは、契約不適合によって買主が損害を被ったときに請求できる権利のことです。また、損害賠償は他の請求権と併用できます。

    損害賠償は瑕疵担保責任でも認められていましたが、契約不適合責任とは内容が異なる点に注意してください。

    瑕疵担保責任では、損害賠償は売主の無過失責任でした。しかし、契約不適合責任では売主の過失責任となっています。

    過失責任とは過失がなければ損害賠償の責任を負う必要がないため、契約不適合責任では売主の過失で起きた損害でなければ、買主は損害賠償はできません。

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    7.契約不適合責任免責が無効になる4つのケース

    もしも購入後の物件に重大な欠陥が見つかった場合、買主は「免責は無効にならないの?」と思いますよね。また、売主としては「免責を付けたけれど無効にならないかな……」と心配になるかもしれません。

    結論からいうと、以下のように免責特約が無効となるケースはあります。ただし、ケースとしては多くはありません。

    • 故意に欠陥を隠した場合
    • 売主が事業者(法人)の場合
    • 売主が宅建業者の場合
    • 新築物件の場合

    免責が無効ならば、買主は売主に対して補修や損害賠償等を請求できますが、売主は重大な欠陥について負担を負うことになります。

    以下に、免責特約が無効となるケースをそれぞれご紹介します。

    7-1.故意に欠陥を隠した場合

    契約上「免責」としていても、故意に欠陥を隠した場合には免責の特約は無効となり、売主は契約不適合責任を問われることになります(改正民法第572条)。

    例えば、売主が雨漏りがあることを知りながら、それを隠して「売買後にはすべて免責とする」というような契約をした場合、免責とする特約は無効となり、買主は売主に対して損害賠償等を請求できます。

    ただし、免責特約を無効とし、損害賠償等を請求する際は、故意だとわかる客観的証拠が必要です。証拠がない場合、故意であるかどうかを立証することは難しいため、実際には無効となり得るケースは多くないといえるでしょう。

    7-2. 売主が事業者(法人)の場合

    買主が個人、売主が宅建業者以外の事業者(法人)の場合、民法のほかに「消費者契約法」という法律が適用となります。そのため、消費者契約法の適用によって免責が無効となる場合があります。

    免責が無効となるのは、主に以下2つのケースです。

    • 契約不適合責任を完全に免責とする特約を付けた場合
    • 「通知期間(売主が責任を負う期間)」を短期間にした場合

    上記2つのケースについて、以下にご説明します。

    7-2-1.契約不適合責任を完全に免責とする特約を付けた場合

    事業者(法人)の場合、消費者契約法により個人の売主に対して不利な条件の契約を取り付けられません。

    契約不適合責任を完全に免責する特約を付けた場合には、その特約は無効になってしまいます(消費者契約法第8条)。

    7-2-2.「通知期間(売主が責任を負う期間)」を短期間にした場合

    また、売主が契約不適合責任を負う期間を短期間にした場合も、期間に関する免責特約が無効になる可能性があります(消費者契約法第10条)。

    7-3. 売主が宅建業者の場合

    買主が個人、売主が宅建業者の場合、民法のほかに「宅建業法」という法律が適用となります。そのため、宅建業法の適用によって免責が無効となる場合に注意が必要です。

    宅建業法では、宅建業者は個人の買主に対した売買契約において、2年間は免責できないと決められています。

    つまり、免責となる期間が2年より短く設定されていた場合には、その免責特約は無効となります。

    7-4. 新築物件の場合

    売買契約には、新築物件の購入も含まれます。新築物件の場合、「住宅品質確保法」という法律が適用され、10年間の保証が義務付けられているため、新築物件であれば保証期間を10年以内とする免責特約は無効となります。

    8.契約不適合責任を「免責」とするメリット

    ここまで、契約不適合責任の「免責」について、基本情報や無効となるケースをご紹介してきました。

    本章ではまず売主・買主、双方のメリットを整理してご紹介します。

    • 売主側のメリット
    • 買主側のメリット

    買主が免責の内容を決めるためには、免責のメリット・デメリットをしっかり把握しておく必要があるといえます。

    また、売主についても同様に、免責のメリット・デメリットを把握しておくことで物件購入の判断がしやすくなります。

    8-1. 売主側のメリット

    売主が免責を付けるメリットは、売却後に責任を負わずに済む点です。

    個人の売主であれば、設備の補修など一部の項目についてのみ免責とする特約も可能ですし、引き渡し直後からすべてを免責とする特約も可能です。

    一方、免責を付けない場合には、民法で定められた「買主の請求権の時効」までは損害賠償等のリスクを負うことになります。

    買主が請求権をもっていられる期間は「引き渡しから10年間」と決められているため、最大10年間は損害賠償等のリスクがあるということです。

    免責によって売買後の損害賠償等のリスクをなくせることは、売主にとって大きなメリットといえます。

    8-2. 買主側のメリット

    免責事項が多いことによる買い手側のメリットはほぼありません。

    ここまでご紹介してきたとおり、免責とは買主にとって「購入後の保証がない」ということ。もしも重大な欠陥が見つかったとしても、「自己責任でどうにかしてください」といわれてしまうのです。

    一点メリットを挙げるとすると、通常よりも安い価格で買える可能性があるところです。免責の多い物件は一般的に価格も安いため、保証を期待せずに購入するぶんには、価格面でのメリットがあるといえます。

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    9.契約不適合責任を「免責」とするデメリット

    次に、契約不適合責任を免責とするデメリットについて解説します。

    • 売主側のデメリット
    • 買主側のデメリット

    デメリットについてもしっかり理解しましょう。

    9-1. 売主側のデメリット

    免責を付けることによる売主側のデメリットは、主に以下の2つです。

    • 契約が決まりにくくなる
    • 販売価格が安くなる

    免責事項が多すぎると買主側のリスクが大きくなるため、契約が決まりにくくなるほか、販売価格にも影響します。

    買主にとっては保証が手厚い物件のほうが安心なため、免責事項が多すぎる物件よりも適度に保証のある物件を選ぼうと思うのが通常です。

    加えて、売主側が「なるべく責任を負いたくないから」と免責事項を多くしてしまうと、買主は「何か問題がある物件なのでは?」と不安になるでしょう。

    そのため、免責事項を多くしすぎてしまうと、契約が決まりにくくなってしまうといえます。

    また、一般的に免責事項が多い物件ほど販売価格も安くなる傾向があるため、免責事項を多く付けすぎてしまうと、物件を高く売ることも難しくなります。

    9-2. 買主側のデメリット

    免責が多い物件は、購入後の保証がないことが買手の大きなデメリットです。

    例えば、住む目的で買った中古住宅に雨漏りやシロアリの害、家の傾きなどの大きな欠陥が見つかり住めなくなっても、契約上「免責」となっていれば保証も損害賠償も請求できません。

    免責の物件を買うことは、すなわち、購入後のすべての欠陥に対しリスクを容認し、自分で責任を負うこととなるのです。

    10.【買主】が契約不適合責任免責の物件を買うときの注意点

    買主としては、価格の安い中古物件は魅力的ですよね。契約不適合責任が「免責」となっていても、条件的にどうしても購入したいと感じる場合もあるでしょう。

    そうした場合、何も考えずに契約をしてしまうと、あとから欠陥が見つかり損をすることにもなりかねません。

    買主が損をしないために、契約締結の前に以下の3つのポイントをチェックしておきましょう。

    • 価格が安い中古物件は免責となっていないか注意する
    • 免責の内容や期間を契約書で確認する
    • 物件の事前調査を行う

    それぞれご紹介します。

    10-1. 価格が安い中古物件は免責となっていないか注意する

    買主の注意点として、価格が安い中古物件や土地が「免責」となっていないかを注意しましょう。

    物件を探すとき、買主はどうしても価格に注目してしまいます。しかし、安い物件には何かしらの理由があるもの。契約内容を確認してみると保証がなかった(多くの事項が免責となっていた)といったケースも非常に多いです。

    免責とする理由はそれぞれですが、基本的には「保証がない」物件であることを承知しなければなりません。

    購入後のリスクを減らすためには、価格だけに囚われずにしっかり契約書の免責内容を確認しておくことが大切です。

    免責の物件を買う場合、以下のように、さまざまなリスクがあることを承知したうえで、買主は免責の契約が適切かを判断する必要があるといえます。

    物件購入後に考えられる欠陥や問題
    土地 地中埋設物、土壌汚染、水はけ、擁壁(ようへき)の状態、生活供給管の状態
    建物 建物の傾き、ひずみ、雨漏り、アスベスト使用、耐震強度、修繕の履歴
    近隣環境 騒音、日照、採光、近隣の建築計画、反社会的勢力事務所等の嫌悪施設
    隣地関係 隣地境界・越境等、通行トラブル、隣家トラブル
    心理的なもの 事件・事故・火災・自殺等による心理的な傷

    10-2. 免責の内容や期間を契約書で確認する

    契約前には契約書の内容をよく読み、免責の内容や通知期間(保証期間)の有無をしっかりチェックしましょう。

    買主が契約時に確認しておくべき内容は以下の通りです。

    • どんな内容が免責とされているか
    • 通知期間が設定されているか

    免責とされる内容は、「経年劣化しやすい設備」を免責としていたり、「地中埋蔵物や土壌汚染について」を免責としていたりなど、契約によってさまざまです。

    契約不適合責任では買主に5つの請求権がありますが、請求権を「追完請求(修補の請求)のみ」としている場合もあります。

    また、通知期間(通知することで売主に保証してもらえる期間)の確認も重要です。

    仮に通知期間が「3か月」となっていた場合、3か月以降にどんな重大な瑕疵が見つかったとしても、補修や損害賠償等を請求することはできません。

    通知期間についても、売買契約書の「特約・容認事項」の欄に記載があるため、必ず確認しましょう。

    10-3. 物件の事前調査を行う

    購入前に家や土地を事前に調査しておくと、購入後に重大な欠陥が見つかるリスクを避けられます。免責物件の場合はなおさら、購入後の保証がないわけですから、事前調査が重要といえます。

    例えば、家を建てるための土地を探していた場合、配管や埋蔵物等によって家を建てられないかもしれません。もしも家を建てられないとなった場合に保証がないと、多大な損失を被ることになります。

    しかし、事前に埋蔵物等を調査しておけば、そのような重大なリスクを回避できます。

    購入前の土地でも、売主が了承したうえで原状回復すれば調査をさせてもらえるため、仲介の不動産会社や売主に相談してみましょう。

    また、マンションなどの中古住宅の場合も、売主に了承を得れば事前調査が可能です。

    建物の事前調査のことをインスペクション(建物状況調査)といい、建築士など調査資格を持った専門家に欠陥等がないかを調べてもらえます。

    木造一戸建て住宅(30坪程度)であれば5万円~7万円、マンションの場合だと5万円程度の費用がかかりますが、重大な欠陥によって契約後に多大な損失を被る可能性は少なくできます。

    もしも事前調査で重大な欠陥が見つかった場合には契約をやめることもできますし、補修可能な欠陥の場合には補修対応を要求したり、物件の値下げを要求したりすることも可能です。

    インスペクションは売主側が実施してくれる場合もありますが、現状そうしたケースはそこまで多くありません。大きな買い物で損をしないためには、買主側が主体的に事前調査を行うことが重要といえるでしょう。

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    11.【売主】が物件を契約不適合責任免責で売るときの注意点

    次に、売主が契約不適合責任を「免責」にして物件を売る場合の注意点をご紹介します。

    売主が損害賠償等のリスクを回避するためには、免責事項を多くすることのほかにも、以下のようにさまざまな点に注意が必要です。

    • 知っている欠陥は契約書に記載し、事前に買主に説明する
    • 免責の内容を契約書に細かく記載する
    • 法律に基づき通知期間(保証期間)を設定する
    • 契約前にインスペクション(建物状況調査)を実施する

    それぞれご紹介します。

    11-1. 知っている欠陥は契約書に記載し、事前に買主に説明する

    7. 契約不適合責任免責が無効になる4つのケースで、欠陥を知っているのに故意に隠した場合には免責が無効になるとご紹介しました。

    つまり、免責が無効になる可能性を排除するためには、知っている欠陥について契約書に記載するとともに、事前に買主に説明しておくことが重要といえます。

    契約不適合責任では「契約書に書いていない事実」に対して責任が問われます。そのため、雨漏りや設備の不具合など事前に知っていた欠陥については、ひとつずつ契約書に記載して買主に説明しておかなければなりません。

    しかし、個人が物件を売る場合には仲介の不動産会社を挟む場合も多く、そうした場合、どうしても契約書の作成を仲介業者まかせにしてしまいます。ここで問題となるのが、欠陥の記載もれです。

    仲介業者は物件の欠陥について売主ほど詳しくないため、事前に知っていた欠陥でも契約書に書いていなかったという不都合が生じてしまいます。

    事前に知っていた欠陥を売主が買主に説明していなかった場合には、免責事項も無効となり、損害賠償等を請求されてしまうリスクが高まります。

    そうしたリスクを抑えるためにも、売主は仲介業者まかせにせず、欠陥についてを契約書に記載してもらうとともに、事前に買主に説明しておくことが重要です。

    11-2. 免責の内容を契約書に細かく記載する

    民法改正後の契約不適合責任においては、免責の内容を細かく契約書に記載しておくことが重要になります。これは、改正前の瑕疵担保責任のように「全部免責」のような一言での記載ができないためです。

    加えて、改正後の契約不適合責任では、「契約書に書いているか、いないか」が重要となります。そのため、懸念事項をひとつずつ「免責」としていくことで、賠償等のリスクを回避しなければなりません。

    例えば、中古マンションで配管の劣化が心配な場合、特約・容認事項の欄に「引き渡し後の配管トラブルについては免責とする」と記載します。同様に、訴訟のリスクがある懸念事項があればひとつずつ記載していきます。

    土地であれば、土壌汚染や地中埋蔵物など、現時点で不明な懸念事項は免責にしておくといいでしょう。

    中古マンションなどの物件の場合、契約時には付帯設備表の添付も必須といえます。

    付帯設備表とは、物件にどのような設備があるのか、現在の設備の状況を記載する書類のこと。免責事項と照らし合わせながら、設備の不具合などを契約時にひとつずつ買主へ説明することで、訴訟のリスクを抑えられます。

    11-3. 法律に基づき通知期間(保証期間)を設定する

    1章でご紹介したとおり、契約不適合責任は通知期間(保証期間)を任意で設定できます。通知期間を設定することで自分の保証期間を決められ、いつまでも保証しなければならないリスクを回避できます。

    ただし、1-3. 免責をつけられる条件は売主によって異なるでご紹介したように、設定できる通知期間は個人か事業者かによって異なるため、民法や宅建業法など、法律に基づいて無効とならない期間を設定しましょう。

    売主の立場によって設定できる通知期間(保障期間)は以下の通りです。

    • 個人|引き渡し直後からの免責設定(通知期間なし)もOK
    • 宅建業者|保証期間は2年間必要(通知期間を2年間とする契約はOK)
    • 宅建業者以外の事業者(法人)|消費者に不利な条件は設定不可(保証期間は1年程度)

    売主が個人の場合、いつから免責とするかは任意で決められますが、スムーズな契約のためには販売価格と免責条件のバランスをとることも大切です。

    通常はすべてを免責とせず、限定的な免責方法をとるケースが多いといえます。仲介業者を挟む場合は、どのような免責内容にすべきかを仲介業者と相談するといいでしょう。不安な場合は弁護士に相談することも可能です。

    11-4. 契約前にインスペクション(建物状況調査)を実施する

    売主にぜひ実践してほしいのが、契約前のインスペクション(建物状況調査)です。

    インスペクションとは、建物の事前調査のこと。5~7万円程度の費用はかかりますが、建築士などの専門家に重大な欠陥がないかを調べてもらえます。

    インスペクションが重要な理由は、事前に欠陥を洗いだすことで契約後の訴訟リスクを回避できる点にあります。

    個人が物件を売る場合、相続などによって土地や家を手放すケースが多いでしょう。そうした場合、売主でもすべての欠陥を把握するのは難しいかと思います。

    そのようなときにインスペクションを行っておけば、契約時にも買主にしっかり説明できます。事前に欠陥を伝えられていれば、「契約不適合」として訴えられることもありません。

    また、インスペクションを行っておけば、免責事項が多かったとしても買主は「検査済みだから」と安心して契約に踏み切れます。検査済みということで高値をつけやすくなるメリットもあります。

    インスペクションを行うことでリスク回避になるほか、スムーズな契約が可能になりますので、実施がおすすめです。

    12.まとめ

    契約不適合責任免責は、「購入後の保証がない契約」といえます。

    売主が契約不適合責任を「免責」とする理由は、売買後の保証のリスクを回避するため。買主側は免責事項が多いほうが安心ですが、買主にとって免責は大きなデメリットとなります。

    免責特約は売主・買主、双方が契約に同意した時点で有効となりますが、無効となるケースもあります。

    • 故意に欠陥を隠した場合
    • 売主が事業者(法人)で一定の条件を満たす場合
    • 売主が宅建業者で一定の条件を満たす場合
    • 新築物件で一定の条件を満たす場合

    買主・売主それぞれの免責のメリット・デメリットをまとめると、以下のとおりです。

    メリット デメリット
    買主
    • 安く買える可能性がある
    • 購入後の保障がない
    売主
    • 損害賠償等のリスクを回避できる
    • 高く売れない
    • 買ってもらいにくくなる

    買主は、免責物件で損をしないために、以下のポイントを押さえておきましょう。

    • 価格が安い中古物件は免責となっていないか注意する
    • 免責の内容や期間を契約書で確認する
    • 物件の事前調査を行う

    売主が免責で物件を売る場合は、あとから損害賠償等を請求されないために、以下のポイントに注意しましょう。

    • 知っている欠陥は契約書に記載し、事前に買主に説明する
    • 免責の内容を契約書に細かく記載する
    • 法律に基づき通知期間(保証期間)を設定する
    • 契約前にインスペクション(建物状況調査)を実施する

    売買契約でのトラブルは、大きなお金が絡み、時に人生を変えてしまうほどの負担となる場合もあります。トラブル回避のためには、買主と売主、双方が納得できる免責内容とすることが大切です。

    売買契約における免責の内容が不安な場合は、不動産会社や弁護士などの専門家に相談してみましょう。

    本記事によってトラブルなく売買契約が進められることを祈っています。

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