2023.03.07 更新 2021.01.19 公開
元銀行員が解説!10年固定の住宅ローンの特徴と2つのリスク

・10年固定の住宅ローンってどんな特徴があるんだろう?
・リスクが隠れてたりしないだろうか?
初めての住宅ローン選びはどんなものを選べばいいか迷ってしまいますよね。
10年固定の住宅ローンは、全期間金利固定型と変動金利型の中間程度の金利になっていることが多く、しかも金利も10年間は固定されているため全期間固定型よりもお得です。
選びやすい住宅ローンですが、リスクももちろんあるため、下記のような方にオススメです。
・節目にサボらず金利状況を確認し、もしもの時は動ける人
・コツコツ貯金できる人
10年固定は名前の通り、10年目までは金利が固定されているため、ほったらかしにすることができます。しかし、10年経って金利が大幅に上がっていることも可能性としては考えられます。
そして、10年1ヶ月目の支払いが大幅に増えて家計を圧迫ということもあります。(もちろん金利が下がっていたら嬉しい誤算です。)
10年目で慌てないためにも、例えば9年目の状況を見て(忘れないようにカレンダーなどに入れる)、もしものときは貯金したお金などで対応できるようにしておける人にオススメの住宅ローンです。
普段お客様に内容を説明するときも、上記のようにご案内し、自分に合っているかどうか判断していただいています。
この記事では、
・10年固定の住宅ローンの基本的な特徴
・10年目以降はどうなるか
・今の金利のままでも10年後は金利が上がる可能性
・9年目からの対応策
・メリットだけを得られる人の条件とその理由
などをお伝えします。
そのためこの記事を読み終わるころには、10年固定の住宅ローンの内容がはっきりとわかり、自分に合っているものかどうかがわかるでしょう。
ぜひこの記事を住まい購入にお役立てください。
Advisor

Author

[著者]
ゼロリノベ編集部
元銀行員・宅地建物取引士・一級建築士が在籍して「住宅ローンサポート・不動産仲介・リノベーション設計・施工」をワンストップで手がけるゼロリノベ(株式会社groove agent)。著者の詳しいプロフィール
目次
住宅ローン10年固定の特徴一覧
10年固定の住宅ローンは、金融機関によって商品特徴が一部異なるケースがあるため、ここでは、一般的な10年固定の住宅ローンの特徴を解説します。
10年固定の住宅ローンは、全期間固定型や変動金利型と異なり、10年間ある程度優遇された金利で固定され、その後に、金利が再計算されるという特徴を持っています。
そのため「全期間固定型よりも金利が安く、かつ変動金利型ほどのリスクはなさそう」と選びやすい面を持っています。
固定された低い金利で当面ほったらかしにできることは魅力的ですが、変動金利と同じく、10年後以降に金利上昇のリスクもあるため、対策できるようにしておきましょう。
具体的な対策方法については5章で解説しています。
住宅ローン10年固定にオススメの人、オススメじゃない人
10年固定の住宅ローンにおすすめの人は、
・リスクに備えてコツコツ貯金ができる人
・節目(9年目程度)には金利チェックをサボらずできる人
・もしものときは対策を実行することができる人
などです。
金利上昇がなければ、あるいは下がっていればもちろんとってもお得になります。しかし、金利上昇をしていた場合、損をしたり、場合によっては月々の支払いが苦しくなる可能性もあります。
そのため、変動金利を選んだ場合ほど普段からマメに金利上昇のチェックはできないけど、節目のタイミングで確認したり、上がっていたときに繰上返済に充てられる貯金をコツコツできる人が10年固定タイプに向いていると言えます。
逆に、
・家を買ったあとは何も考えたくない
・節目での金利チェックや対策も忘れてしまいそう
こういった方は、全期間固定型の住宅ローンであれば、最後まで支払額が同じのため、リスクの心配がなく相性が良いと言えます。
また、
・支払いを1番安く抑えたい
・金利のリスク管理や対策は方法がわかれば日々実践可能
などの方は変動金利の方が金利が低いため相性がよいでしょう。
これらを意識した上で、10年固定の住宅ローンの特徴とリスク、対応策を把握して自分に向いているかどうかをチェックしましょう。
「10年固定」の住宅ローンの3つのメリット
10年固定のメリットは大きく3つです。
・当初10年が全期間固定より低く固定される
・10年後にもっと金利が下がっていればお得度が上がる
・10年運用してから固定と変動を改めて決められる商品も多数ある
それぞれ解説していきます。
3-1.当初10年が全期間固定より低く固定される
10年固定の1つ目のメリットは、当初10年間の金利が、全期間固定型よりも安い金利で済み、変動と異なり固定される点にあります。
低い金利になるのにも関わらず固定のため、変動金利のような上がり下がりのリスクと無縁でいられ、非常に魅力的です。
変動金利のように普段から金利のチェックをせずに済みます。金利が切り替わる前の9年目など節目のタイミングで金利をチェックするだけで管理が済み、楽である点もポイントです。(金利チェックについては5章で解説しています)
3-2.「10年後」にもっと金利が下がっていればお得度が上がる
10年経過後に金利が再計算されますが、世の中の経済状況によっては金利が今よりも下がっている可能性もあります。
全期間固定だと、借り換えをしない限り、高い金利のまま支払いが続きますが、もし10年経過して金利が下がっているならば、同じ10年固定をもう一度組むだけで支払い金額が下がります。
もちろん、そのタイミングで変動金利に切り替えれば、もっと支払額を下げることができます。
3-3.「10年運用」してから固定と変動を改めて決められる商品も多数ある
10年後に金利タイプを変更できる商品が10年固定には多数あります。
実際にローンを組んで10年経過したとき、思った以上に管理ができそうだと思った場合や、金利上昇したから対策もしたけどもう少し金利を下げたいと思った場合に、変動金利を選択することも可能です。
ハガキなどで金利変更のお知らせが届くのが一般的なので、そのタイミングで実際どうするのかを検討していきましょう。
これら3つのメリットがあるため、普段から金利上昇リスクを管理するのは大変だけど、節目のタイミングでの管理ならやれそうという方や、とりあえず10年は抑えめの金利にして、一旦様子見をしたいという方には、選びやすい住宅ローンと言えるでしょう。
「10年固定」住宅ローンの2つのデメリット
10年固定の住宅ローンにももちろんデメリットはあります。
・10年後に支払額が増えるリスクと管理の手間
・10年1ヶ月から猶予なく支払額が変わる
以上の2つがデメリットです。
それでは、それぞれ解説していきます。
4-1.「10年後」に支払額が増えるリスクと管理の手間
10年固定は当初10年は金利が固定されますが、10年後、そのときの世の中の経済状況が反映された金利で再計算されます。
そのため、再計算後が低金利であれば問題ありませんが、上がっている可能性も考えられます。
例えば、4,000万円を借入て10年後に金利が1.1%上昇していた場合、約1.5万円程度月々の支払いが上昇することになります。
詳しくは5章で解説していますが、過去の金利推移から見ると1%以上の変化は2003年から2011年の間に起きているため可能性がゼロの話ではありません。
また、どの程度金利が上がるのかについては未来のことなので全く予測はできません。そのためにも、節目でチェックする必要があると言えます。
全期間固定金利はこういったリスクはなく、変動金利の場合は、固定期間がないため、上がり下がりの管理チェックを自分なりにずっとしていく必要があります。
10年固定の場合は、切り替わる9年目などの節目のタイミングで金利チェックをし、上がっていた場合には対策をする必要があります。
上記の支払い金額が上がるリスクと節目の管理の手間が10年固定の1つ目のデメリットと言えます。
4-1-1.「10年固定」のシミュレーションで支払い増加をチェック
10年固定金利で、仮に10年後に1.1%金利が上昇した、という条件でシミュレーションをした結果、月々の支払いは15,495円増加することがわかりました。(keisanで算出)
ずっと金利が変わらず0.975%の場合と、途中で金利が1.1%上昇し、2.075%になった場合では、支払い総額は、約465万円変わってきます。
毎月で見ると人によっては大きな変化がないように感じるかもしれませんが、総額では大きな差となるため、金利のチェックは忘れずに、もし金利が上がっていた場合は繰上返済等の対策を行いましょう。
具体的な対策方法は5章で解説しています。
4-2.「10年と1ヶ月後」から猶予なく支払額が変わる
10年固定の場合、10年経過し金利が再計算されれば、10年1ヶ月後から新たな金額での支払いがスタートします。
これはつまり、ほったらかしにしていて想定外に金利上昇をしていた場合、いきなり支払いが苦しくなるということに繋がります。(もちろん金利がとても低くなっていた場合にはお得となります)
多くの変動金利の場合は、金利上昇をしてもすぐには支払額に反映されず、また支払い限度も125%までしか上がらないというルールがあります。もちろん、月々に支払う金額に変化がないだけで、支払う総額は増えています。(ルールが適用されるかは金融機関にお問合せください)
しかし、猶予があるため、すぐに支払いが破綻することはなく、その間に各種対策をすることも可能です。
この猶予が10年固定の場合はないため、10年経過する前に金利チェックをしておく必要があります。
変動金利のルールについて詳しくは、こちらの記事の3章をご確認ください。
「10年固定」の9年目からの対策方法
10年固定の住宅ローンは、9年目からチェックや対策を検討することをオススメします。
10年と1ヶ月目の支払いから支払額が変更となるため、切り替わってからだと対応が後手にまわって支払いが増えてしまいますし、精神衛生上も良くないでしょう。
金利が上昇してしまった場合の対策を読んで、自分たちなら大丈夫そうだと思えたなら10年固定を選ぶことをオススメします。
対策方法は2つです。
・貯蓄からの繰上返済
・借り換えの検討
それぞれ解説していきます。
5-1.貯蓄からの繰上返済で元本を減らす
もしも想像していたよりも支払いが増えそうな状況だった場合、貯蓄から繰上返済を行い、元本を減らしましょう。
住宅ローンの利息は、元本を減らすほど少なくなります。月々の返済は元本と利息両方を支払っているため、なかなか元本は減っていきにくいですが、繰上返済は元本のみを繰り上げて返済することができます。
例えば、9年目の月々の支払額が優遇されておおよそ100,000円で、ここから金利が上昇する場合を考えてみましょう。仮に10年以降は、返済期間が残り25年、元本が残り3,000万円で金利が上昇して1.2%になりそうな場合、月々の返済は100,000円から115,798円に変わり、15,798円支払いが増える計算になります。
この場合、10年目に400万円を繰上返済し元本を3,000万円から2,600万円にすると、月々の支払いが100,358円となり、当初10年の固定期間のときと同じ程度の支払いを継続することができます。
そのため、当初の10年で、もし金利が上がっても繰上返済ができるように、積極的な貯蓄を行っておきましょう。
また貯蓄を積極的に行うためにも、借り過ぎは危険です。自分の年収でいくら住宅ローンを借りていいかの目安については、こちらの記事でご確認ください。
上記図は住宅金融支援機構が作成した民間金融機関の住宅ローン金利推移です。
青色が10年固定です。10年固定は下降傾向となっています。しかし、これはあくまで過去のことです。
「今までがこれなら、これからも変わらないだろう」とリスク管理を手放すのは危険です。そのため、金利が上がったらどうするのか?をしっかりと考え、実際に上がっているかどうかチェックしましょう。
5-2.借り換えの検討
他の住宅ローンに借り換えを検討するのも対策方法の1つです。
借り換えとは、新たに別の金融機関で住宅ローンを組みなおして、今借りているローンを一括で返済することを指します。金利の高いローンから金利の低いローンに変更できると、毎月の返済額や総返済額が減る可能性があります。
11年目からの金利を計算して、他の金融機関の金利の方が大幅に低くなりそうな場合は、借り換えも検討しましょう。
この場合、現在のローン金利と借り換え先の金利の差が1%程度かつ、残りのローン残高が1,000万円程度ないと損となると言われています。これは、借り換えの契約手数料などで数十万円が必要となり、得できる分岐点が1%の差と残高1,000万円であるからです。
大幅な金利上昇となりそうな場合は、借り換えを検討する時間も必要なため、9年目の時期に、今の金利が世の中的にどうなっているかをチェックしておきましょう。
10年固定で住宅ローンを組み、途中で借り換えることも可能です。他の金融機関の10年固定に借り換えることもできますが、事務手数料がかかるので注意しましょう。
2,000万円程度が残っているとしたら、60~70万円程度はかかると想定しておきましょう。そのため、一般的には、金利差が1%以上あり、ローン残りも1,000万円以上ないと事務手数料分が損失になってしまうと言われています。
住宅ローンで10年固定を選ぶなら2タイプあることに注意
10年固定には2種類あり、10年後も優遇幅が変わらないものと、変わるものに分けられます。
優遇幅とは、適用される金利がどれだけ低くなるかに影響する数字です。この優遇幅が小さい数字だと高い金利が適用され、大きな数字だと適用される金利が低くなります。
10年後に金利が再計算されるとき、この優遇幅が小さくなってしまうものと、今までと同じ優遇幅のままのものがあるため、ローンを組むときは10年後に優遇幅が変わる商品かどうかを確認しておきましょう。
変化するタイプの場合は、「当初引き下げ」などが商品名についていることが多いため、10年以降の金利もチェックしましょう。
住宅ローンのページで大きく取り扱われている金利の多くは当初10年に適用される金利です。10年後の金利については、優遇幅という項目をチェックしましょう。
もし記載されている場所がわからなければ、直接問い合わせてみましょう。
なお、優遇幅が小さくなるタイプの場合は、変わらないものに比べて当初10年の金利がより低い傾向にあり、最初の10年の支払いをより下げたいという場合は検討してみましょう。金利がどのように決まるかについて詳しくは次の章で解説しています。
6-1.「基準金利ー優遇幅=適用される金利」
適用される住宅ローンの金利が決まる式は、
基準金利ー優遇幅=適用される金利
となっています。住宅ローンのランキングや金融機関の商品ページに大きく掲載されているものは、適用される金利です。
基準金利とは、各金融機関の原則的な住宅ローン金利で店頭金利と呼ばれることもあります。例えるならば商品の定価のようなものです。優遇幅は値引きの数字のようなものです。
例えば下記のような式になります。
2.5%(基準金利)ー1.0%(優遇幅)=1.5%(実際に適用される金利)
住宅ローンを組む場合、基準金利は申し込み時や契約時の数字がずっと続きます。優遇幅も一般的な全期間固定型や変動金利型の場合は変わりません。
しかし、当初引き下げ型などの10年固定の住宅ローンの場合、優遇幅が10年目以降で変更となります。
そのため、10年以降の優遇幅がどの程度になっているかをチェックしてシミュレーションをしておきましょう。
10年固定のシミュレーションには、カシオのkeisanが使いやすいのでオススメです。
入力する際は、当初金利を10年の金利、その後の金利は、現在の基準金利から10年後の優遇幅を引いた、適応される金利を入力しましょう。
6-2.実際の10年固定の例を紹介
下記はある金融機関で適用される優遇幅が変化するタイプの10年固定の例です。
これは一例のためどの程度の優遇幅の変化があるかは、金融機関によって異なるため、気になる商品がある場合は実際に確認し計算をしましょう。
10年目までは優遇幅=1.8%
2.775%(基準金利)ー1.8%(優遇幅)=0.975%(実際の金利)
10年以降は変動に切り替えた場合に優遇幅=0.7%となります。仮に基準金利が今と一切変化しなかった場合で計算します。
2.775%(基準金利)ー0.7%(優遇幅)=2.075%(実際の金利)
数字で見るとわかる通り、10年までとそれ以降で、支払額の変化が起きるため、9年目には支払額を再計算し、対策をすべきかどうか検討しましょう。
まとめ
10年固定の住宅ローンは、全期間固定型や変動金利型と異なり、10年間ある程度優遇された金利で固定され、その後に、金利が再計算されるという特徴を持っています。
そのため「全期間固定型よりも金利が安く、かつ変動金利型ほどのリスクはなさそう」と選びやすい面を持っています。
ただし、変動金利と同じく、10年後以降に金利上昇のリスクもあるため、対策できる人にオススメできる住宅ローンです。
10年固定のメリットは大きく3つです。
・当初10年が全期間固定より低く固定される
・10年後にもっと金利が下がっていればお得度が上がる
・10年運用してから固定と変動を改めて決められる商品も多数ある
しかし、下記のようなデメリットもあります。
・10年後に支払額が増えるリスクと管理の手間
・10年1ヶ月から猶予なく支払額が変わる
もしものときに、下記2つの対策方法をとれるようにしておきましょう。
・貯蓄からの繰上返済
・借り換えの検討
自分の性格に合った住宅ローンを選ぶことで、自分たちにとって理想の住まいを無理なく手に入れていきましょう。
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